庭2023年夏号No.251
連載-未来を植える人びと-第23回
取材・文=梶原博子


未来の庭を彩る
植物の種を蒔く

関東では、同業者から「圧倒的な品揃え」と信頼が寄せられている神奈川県海老名市の生産者・古以津美園芸。園芸品種を中心に、約500品種の植物の生産に力を入れる。 5年後10年後を見据えた生産へのこだわりを聞いた。

 神奈川県の中心に位置する海老名市。田園風景が残る豊かな自然に囲まれているが、小田急線と相鉄線が乗り入れ、東京や横浜へのアクセスの良さもあり、子育て世代を中心に長期的に人口が増加する人気エリアだ。街の玄関口である海老名駅から車で10分程走ったところに、古以津美園芸がある。今回、植木生産を行う農園を案内してくれたのが、同社2代目の古泉謙治さんだ。
 「海老名は米といちごの生産が盛んで、植木生産をやっているところは少ないんですよ」と話す古泉さん。祖父の代までは、米や野菜をつくる農家で、父親が農業大学校時代に恩師から植木生産を勧められて、卒業後に就農するタイミングで、モミジの生産を開始したという。始めは露店で販売していたが、高度経済成長期には、公共事業に連動して需要が高い緑化木へと生産をシフト。ちょうどその頃に、神奈川県内で活動する植木生産者たちとアメリカからレッドロビンを仕入れ、日本の新しい垣根材として売り込めないかと、研究を開始する。「レッドロビンは根付かせるのが難しくて、最初はうまくいかなかったそうです。試行錯誤を続ける中で、苗木を自分たちで開発したナイロンポットに植えたところ根にダメージを与えずに、健康的に根付かせることに成功。そこから爆発的にレッドロビンが流行して、全国各地に販売ルートを広げていきました」と古泉さんは語る。

アメリカでの園芸品種との出会い

 幼い頃から父の背中を見て、家業の手伝いをしていた古泉さんは、高校卒業後に農林水産省が管轄する農業者大学校へ進学する。大学のカリキュラムで研修期間が設定され、東京の卸売販売業者に1年、千葉の生産者の元で半年間実務を学ぶ。・・・記事の続きは、庭No.251の紙版・電子版で。

取引先の植木卸業者のご神木のナギが青みがかっていて美しかったことから枝を分けてもらい、挿し木で増やした「ナギ・スモーキーブルー」。
先端が柔らかく棘がないアガベ・ベスコルネリア・ユッコイデス。ペットや小さな子どもがいる家庭で人気がある。
多種多様な品種が揃うスプリングベル。
古以津美園芸の圃場。ビニルハウスで育てた挿し木や苗木は、ポットのまま屋外に出し、その後路地栽培にして大きく育てる。
シルバーと青みの葉が特徴のタスマニアマキ。
ハウス内で挿し木用の枝を切るのは、古以津美園芸の社長で謙治さんの父親の古泉喜久治さん。
古泉謙治(こいずみ・けんじ)

古泉謙治
こいずみ・けんじ│1971年神奈川県海老名市生まれ。1993年農業者大学校卒業。同年古以津美園芸入社。海老名市内10箇所合計2.5haの畑で約500品種の園芸種の生産に当たる。
古似津美園芸(神奈川県海老名市)

       【地図から探す植木生産者】

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