庭の未来へ
今、「庭」業界の状況は、決して芳しいものではありません。
燈籠や蹲踞を配する庭や、茶庭をつくるような施主が減ってきていること。
趣味や嗜好の多様化にともない、庭=日本庭園というだけではなく、
さまざまな庭園のスタイルが好まれるようになってきたこと。
庭が必ずしも「プロの手」に頼らず、
施主たちも積極的に関わるスタイルが望まれるようになってきていること。
など、さまざまな理由が挙げられます。
しかし、日本庭園を俯瞰的に見ると、社会から求められている要素がとても多いことに気づかされます。
環境問題を緩和する要素があること、
あるいは人間の心身の健康を保つことに寄与すること、
住まいや働く場の環境を整えることなど、
今、社会問題として提示されていることの解決への道が、「庭」にこそ、あると思うのです。
では今、「庭」の業界では何が起こっているのでしょうか。
これからどこへ向かおうとしているのでしょうか。
あるときは鳥の目で、またあるときは虫の目で、
「業界の今とこれから」をウオッチし続けていく使命をもっているのが、本誌『庭』の使命だと考えています。
現場の取材を重ね、「庭の今」を伝えつつ、過去の庭を紐解くことで、
時代が求める「庭」、さらにこれからの「庭」の姿を見いだしていきたいと考えています。
また「日本庭園」を狭義にとらえず、日本が育んできた独自の文化として、
国内外に発信していくことも、続けていきます。
日本庭園は日本が誇れる独自の文化と言っても過言ではありません。
美術家の故・岡本太郎氏は著作で、中世の頃に出来た庭を「日本的伝統のサンプル」とし、
新たな伝統を打ち立てていくためのきっかけとして、分析、批評しました。
そのしめくくりに
「…つくられた動機いかんにはこだわらず、あくまでも今日の芸術のもっともきびしい、高度な立場でそれらにぶつかるべきです」と、既に約60年前、庭にかかわる人たちに、エールを送ってくれていました。
読者のみなさま、「庭」の過去、現在、未来を、ご支援いただきたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
出典:『日本の伝統』(『知恵の森文庫/光文社』)
『庭』編集長 澤田 忍