庭2024年夏号No.255
連載-未来を植える人びと-第27回
取材・文=梶原博子


造園の経験を生かし魅力的な樹木の提案を目指す

大学時代、恩師でランドスケープデザイナーの平賀達也さんとの出会いから、庭づくりやランドスケープデザインの面白さに目覚めたという宇津木康平さん。5年間の造園会社での修業を経て、家業の植木生産・卸売業の道に進んだ思いを聞いた。

 今回訪れたのは、千葉県東金市の宇津木農場である。千葉市の東側に位置する東金市は、温暖な気候に恵まれ、平野部は田園地帯が広がり、丘陵地は森林に覆われている。農場を案内してくれたのは、今年、修業先の造園会社から家業に入ったばかりの宇津木康平さんだ。
 同社の創業は約60年前にさかのぼる。宇津木さんの祖父がイヌマキやマサキなどの垣根材と、シラカシやアラカシなどの高木類の生産と卸売販売を開始。
 「このあたりは東京や千葉へのアクセスが良く、植木生産・卸の集積地として、昔から植木農家や造園業を営むところが多いんです。海に近く、夏は涼しく、冬は暖かい温暖な気候で、降水量は都内とほぼ同じ。海側の九十九里平野は砂地で地下水位が高いため、50㎝も掘れば黒くぬかるんだグライ層が出てきます。ですから、そうした水が多い土壌でも育つマキの生産が普及したのでしょう。一方、東金市の北西の千葉市や八街市にかけての房総丘陵は関東ローム層が広がり、黒ボク土が分布するため、落葉高木がよく育ちます。祖父の代から土壌の特性に合わせて、平野と丘陵地の畑で植える樹種を分けて管理してきました」と宇津木さんが説明してくれた。宇津木農場では、生産が2割、卸売業が8割で、創業当初は、・・・続きは庭No.255の紙版・電子版で。

関東ローム層の黒ボク土が分布する房総丘陵にある圃場では、常緑と落葉の紅葉樹を植えて管理する。
出荷のため、圃場からスダジイを掘り取る。まずチェーンソーを地面に突き刺して根切りを行う。
高木をクレーン付きの車でつるし上げた状態で、根巻きをする揚げ巻きの光景。
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苗木や鉢植えの生産管理を行うビニールハウス。
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高木が並ぶ丘陵地の畑。都内のマンションでは、シラカシやナナミノキなどの高木の人気が高い。
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根切りをした後、油圧ショベルカーで掘削して、樹木を掘り出す。

宇津木康平
うつぎ・こうへい|1996年千葉県東金市生まれ。2019年東京農業大学造園科卒業。同年富士植木入社。2023年12月退社、2024年1月から宇津木農場入社。約5haの圃場で、約500品種の植物を扱う。
株式会社宇津木農場(千葉県東金市)

       【地図から探す植木生産者】

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