庭2024年春号No.254
連載-未来を植える人びと-第26回
取材・文=梶原博子


多様な植生に魅せられて南アフリカへ
生産と造園を強みに植物の魅力を伝える

日本四大植木産地に数えられる、大阪・池田市。住宅メーカーの造園グループ会社に勤務した後、南アフリカ共和国に渡って修業を積んだ谷向俊樹さん。精力的に緑を軸としたイベントや地域活動に参加して、植物のあるライフスタイルの素晴らしさを伝える。

関西の一大植木産地として知られる、大阪・池田市。阪急池田駅から北に車で10分程走ったエリアに、植木生産が盛んな細河地区がある。
 この場所で明治時代から植木生産・卸売販売を営んでいるのが、緑向ガーデンだ。今回、取材したのは5代目に当たる谷向俊樹さん。1年程前から、何組かの造園家から「池田の緑向ガーデンの取材に行かないの?」「谷向くんは最高に面白いから会った方がいいですよ」と、名前が挙げられたこともあり、気になっていた人物だ。「先輩方から推薦していただけるなんて、光栄です」と話す谷向さんは、立派な髭を蓄えた顔をほころばせながら、圃場を案内してくれた。

フェインボスに魅せられて南アフリカ共和国へ

 緑向ガーデンは、谷向さんの高祖父が明治に苗木栽培から植木生産を始め、戦後の高度経済成長期には、カイヅカイブキやツツジ類を少品種大量生産していたそうだ。現在、代表を務める父親の谷向健一さんは、京都で造園の修業を積んだ後に家業に入り、庭づくりに使いやすい雑木類や果樹、下草類なども扱い、樹種を増やし、多品種少量生産にシフト。現在は、祖父の谷向健司さん、健一さん、俊樹さんの親子3代とスタッフ2名で、植木の生産と販売、造園工事を行っている。
 5代目の谷向さんは、大学で宇宙物理学を学んでいたが、家業の手伝いをするうちに植木や造園の面白さに目覚め・・・続きは庭No.254の紙版・電子版で。

日当たりの良い平坦地の圃場で仮植されたニューサイラン。一般に流通するものよりも大きい株で個性的な庭を演出する。
高木に囲まれた山の中の圃場では、周囲の環境を利用して、半日陰を好むモミジやアオダモを植えて、自然な樹形に育つよう管理している。
ビニールハウスでは、主に苗木類を育てる。南アフリカ共和国原産の植物の育成と順化にも取り組む。
緑向ガーデンには、谷向さんが好きなイネ科の植物が豊富に揃っている。
大阪府守口市の道路や公共空間などを活用した社会実験「守口さんぽ」。2023年11月は空き店舗に植物で装飾して、DJイベントなどを開催した。
植木の仕事を通して、高齢者の介護や病気を予防する取り組み「いつもyobouいけだ」の活動風景。
谷向俊樹(たにさき・としき)

谷向俊樹
たにさき・としき│1994年大阪府池田市生まれ。2016年関西学院大学理工学部物理学科卒業。同年住友林業緑化入社。2019年退社、同年南アフリカ共和国へ渡る。レオン・クルーガーの下で半年間修業。2022年4月に帰国し、緑向ガーデン入社。約1.5haの圃場で、200品種の植物を扱い、造園の設計・施工も請け負う。
緑向ガーデン(大阪府池田市)

       【地図から探す植木生産者】

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