土が広げる文脈 手と共にある思考 Savoir&Faire『土』

Savoir-faireとは、フランス語でスキル、すなわち「手わざ」のことを指す。自然素材にまつわる知識や技術の共有を目指すエルメス財団によるスキル・アカデミー。本書はこの取り組みの一環として書籍化されたSavoir&Faireシリーズをベースに日本の読者向けに翻訳・コンテンツを加えたものである。前巻『木』に続く、今回のテーマは「土」。一つの素材が歴史を通じてどのように専門的かつ普遍的な「手わざ」を育んできたのか、またそれがどのような知の系譜をつくりあげてきたのかに迫るものである。

歴史、建築、アート、陶芸、民俗学など多様な切り口から「土」が語られる。「Ⅰ 土と生きる」「Ⅱ 土とつくる」「Ⅲ 土と動く、土は動かす」と構成された3つの章題に触れるだけでも、「土」という語の広がりをさまざまに喚起させられる。日々土と向き合う私たちの生業だが、その土の存在は、生きものが住まう環境・空間づくりの文脈だけではない。「土」は時に、人間のあいだに宿る身体性、職業階級、政治や経済など社会の有り様を語る根源的要素でもあるということだ。土を多角的にとらえる行為は、業界に求められる横断的な思考を耕し、土の持つ普遍性を掘り起こす。私たちの生業の根源や可能性をも見つめ直すことにつながりそうである。

そうていも美しい本シリーズ。紙の本の魅力でもある、手で触れ・読み・感じることから、「素材」に迫る本書のうち容とあいまって伝わってくるものがある。前巻『木』も奥行きが感じられる一冊。ぜひ併せて読み、触れてみてほしい。
【庭NIWA 254号掲載】

Savoir&Faire『土』 
エルメス財団=編
発行/岩波書店
定価/2,970円(税込)

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