世界的造園家ピート・アウドルフ氏(代表作:ハイライン/ニューヨーク)と、共に生涯「庭の自然性」を探究したヘンク・ヘリッツェン氏。彼らの世界観に魅了され、織りなす植物やデザイン、色彩や配植、細かなあしらいまで、目を凝らして研究している造園家、生産者の方は多いはずだ。
本書は、冬の枯れ姿までも美の世界に取り込んでしまう、彼らの審美眼からなる宿根草の世界に迫る。庭を育てる人を意識した、植物の紹介や使い方から植物の組み合わせ方までを記している。特徴は、なんといってもユニークな各章のカテゴライズだ。植物図鑑というと科学的・システマチックな書籍が多いなか、「植栽は、植物以上のもので成立している。それは空気感・季節感・感情などを呼び起こすもの」という彼らの哲学を映し出すような構成となっている。透明さ、抜け感などニュアンスのなかにある庭の骨組み、植物の個性と役割。彼らの着眼点からそれらを読み解く。ユーモアとウィットに富んだヘンク・ヘリッツェン氏の人柄が垣間見られる植物描写も一つの魅力だ。ページをめくりながら植物の揺らぎや生命力を感じられる、詩的な植物図鑑である。
本書の最後で編著者ノエル・キングスベリー氏が日本の読者に向けて、彼らのテクニックと伝統的な日本庭園が持つ美学の共通点や類似点が見つけられるのでは、と語っている。海外の自然・庭の美しさに魅了されるとついつい湧いてしまう、自分たちのフィールドにその世界を取り込みたくなる欲求。それに応えてくれるような想像力への刺激と情報が詰まった一冊である。
オールシーズン美しい庭ピート・アウドルフ/ヘンク・ヘリッツェン=著
ノエル・キングスベリー=編著 田辺沙知=訳
発行/学芸出版社
定価/4,620円(税込)