歴代の学会賞から見渡す 業界100年の歩み『日本造園学会 100周年記念誌』―作品編

 日本造園学会は2025年に創設100周年を迎え、本記念誌が制作された。これまでの学会賞受賞85作の中から17作品に着目し、日本の造園・ランドスケープが歩んできた100年を振り返る。学会賞を等身大の視点からとらえ直し、これからを見つめる手掛かりを示す。

 本書では、単なる受賞作品の紹介にとどまらず、設計者本人による解説に加え、現地への再訪やインタビューを実施。設計者や事業は何を見つめ、何を動かそうとしてきたのか。今の時代の風を受けて、当時を語る。

 インタビューは、1978年、高度経済成長期に失われた海を都民に取り戻そうとする構想で受賞し、東京都の海上公園事業を推進した樋渡達也氏から始まる。さらに、本号でも登場した桝井淳介氏による2021年受賞・実相寺客殿庭園『壱天四海の庭』も収録されている。師との対話、それぞれの時代に生じたもどかしさ、作品紹介だけでは照らしきれない言葉の数々。造園業の体質が大きく変わった変革期の中で互いに影響を与え合い、意を決した瞬間や朝を越す語らいなど、人間味あふれる関係性が浮かび上がる。学会賞という点を手掛かりに、その時代ごとに何が求められていたのか、その濃淡を感じながら、業界の歩みを俯瞰する。

 造園界隈でも、100年という時間を見つめ直す節目にある。時代を貫く縦軸と、課題や分野を横断する横軸をあらためて見渡すとき、自分がどこに立ち、どこへ向かうのかを問い直す契機を与えてくれる。

【庭NIWA 263号掲載】

日本造園学会 100周年記念誌―作品編
100周年記念誌 作品編委員会=編
発行/日本造園学会
会員2,000円(税込)/非会員2,500円(税込)/学生1,500円(税込)

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