“場”のデザインに 向き合い続けた45年の軌跡『ランドスケープの夢』

世界で活躍するランドスケープアーキテクト高野文彰と高野ランドスケーププランニングの、45年にわたる膨大な活動の全軌跡をまとめたものが本書だ。北海道、東北、静岡、沖縄など国内はもとより、マレーシア、台湾、中国、フランス、カタール、ドバイ、サモアなどの海外事例も多数掲載されている。

高野ランドスケーププランニングが現在本拠地を置くのは北海道だ。バブル期真っ只中に東京から移
住し既に30年が経つ。事務所のある十勝を中心に「十勝千年の森」「十勝エコロジーパーク」「北海道ガ ーデンショー 2012」「あさひかわ北彩都ガーデン」など手掛ける他、地元の人達と共に行うワークキャンプ「十勝サーカス」を共催するなど、既にそこにある自然を整備し、対話の場とするプランナーとしての活動も目覚ましい。

アメリカ留学時に見た映画『peopleʼs park』のこと、砂漠の民のテントでアラビアコーヒーで歓待された会議、子供の遊び場をつくるためにゲーム『ドラゴンクエスト』をやり込んだこと、大雪の日に馬に乗って出社した時の様子など、作品解説の合間に差し込まれる多様なエピソードから、高野氏の多才さとユニークな発想の源を垣間見ることができる。

「誰のためのデザインなのか」「どんな物語を紡ぐのか」──場をデザインするにあたっての根源的な問いと現在進行形で向き合い続ける著者からの問い掛けに、誰もが大いに刺激を受けるだろう。
【庭NIWA 240号掲載】

ランドスケープの夢 
高野文彰/高野ランドスケーププランニング=編著
発行/建築資料研究社
3,800円(税別)

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