多彩な施工例から見る 作庭の助言書『日本庭園の魅力』

作庭家として、そして日本全国と海外の日本庭園の調査研究をしてきた著者が、これまでに作庭してきた代表的な作品を紹介する本書。世界遺産であるウィーンのシェーンブルン宮殿内につくった茶庭の作庭経緯や作例紹介から始まる。

一見敷居が高いように見えてその実、著者自身があとがきで「読者が自分自身でも庭造りができるように、その要点をできるだけ具体的に解説した」と書くように、自宅や職場に庭園を、と考える読者への庭づくりにおける具体的なアドバイスに満ちている。作品の写真と共に掲載される解説では、作庭の経緯や意図はもちろんのこと、施主のリクエストや予算にどう応えたのか、などの“事情”も垣間見える。

「アプローチとエントランス」「坪庭と枯山水」「茶庭と雑木の庭」「室内庭園、ベランダ庭園」という章立てにて紹介される作例数は20を超える。既存建築が和風の場合、洋風の場合、茶室の庭、現代建築の坪庭、店舗の庭ではアプローチや室内庭園など、幅広い施工作品が掲載されている。アプローチまわりでは駐車場の場所なども含め施主へアドバイスしたり、門扉や塀の設計をオリジナルで作り上げるなどの実例もあり、庭園を取り巻く総合的な意図がよく分かる内容となっている。
【庭NIWA 240号掲載】

庭師の匠が説く 日本庭園の魅力 
小口基實=著
発行/新泉社
3,000円(税別)

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