造園に触れながら理解するランドスケープデザイン入門書『建築と造園をつなぐ ランドスケープデザイン入門』

 建築と造園を横断する「ランドスケープデザイン」をどう学ぶのか。建築と造園の間に立ち、その接点から、学びの道筋を照らしてくれるのが本書である。著者は教育現場での経験をもとに、デザイナーの仕事のプロセスを解説し、敷地分析をはじめ、ゾーニング、調査、設計図面の描き方、植栽計画、施設ごとの計画に至るまで、設計がいかに組み立てられていくのかを順序立ててまとめている。体系立てられた構成は、これから実務を学ぶ学生にとって心強い一冊だ。

 本書では、各章に演習問題と解答が用意され、学校でエスキスに取り組むような感覚を伴って学ぶことができる。ランドスケープデザインの基礎や、計画でおさえなければならないキーワードがとにかく分かりやすくまとめられている。また本書からは、著者の海外での経験がところどころに表れているのも特徴である。米国やヨーロッパをはじめとする多彩な事例写真が豊富に紹介され、視覚的にも学びを促す。海外の動向や、職能としての社会での立ち位置などもつづられている。日本庭園や伝統的な庭園文化に基づく考察も織り込まれており、歴史と現代をつなぐ視点で読み解ける点は、本誌の読者の視野も広げてくれるだろう。各章にはキーワードが整理され、英語表記も付されているため、海外プロジェクトに関わる人や留学を志す読者にとっても有用な手引きになるかもしれない。

 ランドスケープデザインがより親密に建築や造園と関係しながら描かれる新しい風景。その歩みへ、これからこの分野を学ぶ人々が加わっていくことを期待したい。

【庭NIWA 261号掲載】

建築と造園をつなぐ ランドスケープデザイン入門
鈴木あるの=著
発行/学芸出版社
定価/3,080円(税込)

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