「観光を見る眼」をキーワードに、大阪観光大学が発刊するブックレットシリーズの第2巻。日本は飛鳥時代から、また西洋は古代ローマの庭園からその成り立ちを最新の研究成果と合わせて振り返ることから始まる。今や世界中で歴史的に価値あるものとして観光対象となっている庭園、その置かれている状況について、時代を超えた視点で語られている。
西洋の庭園は、王侯貴族を始めとした権力者層の邸宅や別荘に付随するものが主である。一方、日本では富裕層、権力者層の邸宅ほか、数多の寺社仏閣に文化財庭園が残されているのが特徴だ。この「寺社仏閣」と一般市民による「観光」は、江戸期の歴史を紐解くと密接に関わっていることが分かる。日本においては、庭園を見る眼のうち“観光”が非常に大きなものであることが、本書から分かるだろう。
文化遺産として適切に保護されることが望まれている歴史的庭園には、継続的な維持管理、手入れが不可欠となる。それぞれの風土と時代がうかがえる、価値ある庭園を次世代に引き継ぐため、費用の充当や、入場者数のコントロール、また多くの人から理解と支援を得るために情報発信の必要性など、課題を抱えている持ち主は多い。
これらに取り組む方法として、“観光”のプロたちとの協力関係があり得るのではないか。そんな展望が垣間見える、手引き書とも言える内容となっている。
【庭NIWA 249号掲載】
小野健吉=著
発行/晃洋書房
定価/1,100円(税込)