フレデリック・ロー・オームステッド(一般的にはオルムステッド。本書では発音に近づけた表記としている)。本書タイトルでもある「セントラルパークをつくった男」、また「ランドスケープの父」とも称される、造園界に身を置くものなら言わずと知れた人物である。昨年、生誕200年を迎えたオームステッドだが、その生涯を通してみた哲学や思想に触れた本書は、総ページ数576頁にも及ぶ大作である。
社会インフラの一つとして都市公園の在り方が問われ、変わりつつある現在、誰もがアクセスでき、心身の健康を保てる場としての都市公園を、100年以上も前に標榜したオームステッドの設計思想に触れることは、今だからこそ意義あることだと言えるだろう。
訳者の平松宏城氏は、90年代の荒廃したセントラルパークが現代のような「都市のオアシス」として生まれ変わったことに衝撃を受け、その背景を探っていくなかで、この本の原書に出会った。2006年にランドスケープデザイン会社を起業する際には、自身のビジョンを確認するためのバイブルとして、何度もその原書を読み返したという。
この原書は20年以上も前に出版されたものだ。しかし古びるどころか、現代に通じる要素が多く驚かされる。訳者の平松氏は、この本はもっと多くの人たちが読んで知るべきではないかと思い至り、この大作の翻訳に臨んだ。SDGsが言われる昨今だからこそ、本書に著された普遍的な価値を読み解いてみたい。
【庭NIWA 251号掲載】
ヴィートールド・リブチンスキー=著 平松宏城=訳
発行/学芸出版社
定価/5,280円(税込)