森で交わされる木々の会話 映画「アバター」の原案にもなった生態学的発見『マザーツリー』

世界的ベストセラー『Finding the Mother Tree: Discovering the Wisdom of the Forest』の著者、スザンヌ・シマード氏は、“人々の森を見る目を変えた”と言われるカナダの森林生態学者である。森林内の樹木同士の地中内に張り巡らされた菌類ネットワークを30年以上も研究し、「木々が互いに会話をしている」という驚くべき発見をした。本書は、森に入り、眼と手で導き出された科学的知見を得るまでの記録であり、回想録である。女性研究者、そして一人の母として、人生の出来事が研究と重なり合った結果、独自の説得力のある強いメッセージが生まれたと言えるだろう。

長きにわたる辛抱強い実験と観察の成果は、森林内の長老木“マザーツリー”の存在を示した。樹木同士の地中内の菌類はネットワーク化され、情報を共有しメッセージを送り、養分や水分が行き交う。マザーツリーが、母なる木として森林の重要な源の存在であることを科学的に証明するのである。
 
古い大きな木を「コミュニケーションのハブである」、年長の木々と若い木々の関係を「親が子供の自立を助けている」などと表現し、著者は自然の“周囲を知覚する力”についての重要性を綴る。さらに科学的理論を超えて、現代社会に伝わりやすいネットワーク言語やコミュニティ、家族、友人関係に置き換え、読者に新たな森の見方を提示している。本書は、サイエンス本を超えた「つながり」を考え直す一冊である。
【庭NIWA 251号掲載】

マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険 
スザンヌ・シマード=著 三木直子=訳
発行/ダイヤモンド社
定価/2,420円(税込)

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