今こそ改めて考える 庭園の在り方とは 『庭園に想う 庭園は文化の表看板』

庭園は長い歴史の中でさまざまな様式や作庭スタイルを生み、変化し続けてきた。時には権力者の財力や権威の象徴として、現代においては憩いの場として個人庭から公共空間まで多様な形で私たちの生活と密接に関わっている。

著者は新潟で造園に携わりながら、国内外のさまざまな庭を研究しており、これまでの新聞や雑誌への寄稿文や著書、論文を再整理しまとめたものが本書である。第四・五章で取り上げられている海外の日本庭園の事例のひとつ、ハコネ庭園(アメリカ・カリフォルニア州)は、100年余も前に個人の別荘庭園として築造されたが、時を経て建築物・庭園の老朽化、存続のための運営財源不足、庭園の維持管理の技術者不足など、海外につくられた日本庭園ならではの問題をさまざま抱えていた。

それに対して著者は、マスタープランの中で、①姉妹庭園関係の構築 ②国際庭園会議の招聘 ③海外技術支援の要請を掲げ庭園技術向上への支援として「小形会」を推薦した。小形会では市民連携を主体とした独自の管理運営プログラムなど、人と庭園との関係性を主軸とした体制づくりによって今後も庭園を維持できるような仕組みを考えている。

他にも地元である新潟地方の145の史跡庭園の分析や、自身の手掛けた庭園の設計プロセスやテクニック、社会における庭園の役割と展望についてなど、実践と理論を併せ持った著者ならではのアプローチで語られている。これからの庭園の在り方を考えるヒントが詰まった一冊と言えるだろう。
【庭NIWA 248号掲載】

庭園に想う 庭園は文化の表看板 
土沼隆雄=著
発行/博進堂
定価/2,200円(税込)

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