庭2022年秋号No.248
連載-未来を植える人びと-第20回
取材・文=梶原博子


発酵の力を借りた土づくりで
健やかな植木を提供する

東急電鉄の宅地開発と横浜みなとみらいの都市開発をサポートする植木供給地として発展した、神奈川県川崎市の宮前地区。親子3代に渡って営んできた植木卸売販売の家業を継ぎ、3代目となった社長の小島久典さんは、毎日圃場で植木や土に向き合い、自ら全国各地に出向いて植木の仕入れに奔走する。

 神奈川県川崎市宮前地区は、東京や横浜を中心とした庭づくりを支える植木の産地である。東急田園都市線梶が谷駅から車で分程走った丘の上に、小島植物苑はある。代表の小島久典さんは創業者の祖父から数えて3代目に当たる。
 「この辺りは元々農家が多かったのですが、東急電鉄が田園都市線を開通させ、沿線に住宅街を造成していく過程で、野菜農家から植木の生産や卸売に転じたところが多かったようですね。その後、横浜みなとみらいの開発が始まると植木の需要が増え、それもこの地域の植木産地としての発展の後押しになったようです」と小島さんは話す。
 東京近郊には、埼玉の安行をはじめ、いくつかの植木産地が点在するが、神奈川県は関東でも南方に位置し、比較的温暖であることから九州から仕入れた樹木もよく育つ。またオーストラリア原産のメラレウカやアカシア類、ユーカリといった人気のオージープランツの生産や卸売販売をする業者も川崎から横浜地域には多い。庭木に良く使われる常緑のシマトネリコは、埼玉あたりでは寒さで落葉することも多いが、川崎あたりでは葉を落とさずに育成できるそうだ。
 小島植物苑は、その前身となる小島商事を小島さんの祖父が・・・記事の続きは、庭No.248の紙版・電子版で。

園芸品種や盆栽用の植物を中心とした樹木を露地栽培して管理するエリア。剪定や管理の工夫によって、庭のアクセントになるような樹形に育成している。
一般的に低木として使われているセイヨウニンジンボクを、剪定によって形を整え、シンボルツリーとしても使えるように仕上げた。
搬用にアガベの葉を丁寧にしおっていく小島植物苑のスタッフ。
微生物によって発酵させた肥料を土に混ぜて使う。植物の根付きが良いと評判で、同社に土壌を買いにやってくる造園家も多い。
赤と白のコントラストが美しい園芸種のモミジ、コチョウノマイも大きく育てて庭木として提案している。
透けた葉脈が美しい園芸種のシギタツザワも庭木として使えるように仕立てている。
小島久典(こじま・ひさのり)

小島久典
こじま・ひさのり|1984年川生まれ。2007年東京農業大学造園学科卒業。植木産地として知られる埼玉県川口市安行地区の園芸卸売販売店で3年半修業ののち、2011年小島商事(現小島植物苑入社。2015年社長に就任。2021年社名を小島植物苑に改称。2haの農場で約200品種の植物を管理し、造園の緑化樹から園芸花木までを扱う。また樹木医として、各種診断業務から移植工事、造園の設計、施工管理まで一貫して行う。男女共に随時スタッフ募集中。
株式会社小島植物苑(神奈川県川崎市)

       【地図から探す植木生産者】

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事