捨てられてきた素材を利用した「アロマオイル」の製造は、“六次産業化”を背景に、今、注目されつつある分野だ。
本書の著者、稲本正は、国産の木材を余すことなく使い切ることにこだわり、1974年に飛騨に工房を構えたオークヴィレッジ創業メンバーだ。
家具工房を運営する中で「ムダなモノ」として捨て去っていた、木を加工する過程で出てきた大量の水分に着目した著者は、そこに含まれる精油を「日本産アロマ」として提供できるよう試行錯誤を重ねてきた。「森の香り」を精油にすることを20年も前に始めた先駆者と言える。
アロマ成分詳細から使用方法までを解説した本書は、2010年に刊行された『日本の森から生まれたアロマ』をリニューアルしたもの。クロモジ、ヒノキ、アスナロ、スギ、モミ、サンショウ、ヒメコマツ、ミズメザクラなど、樹種別の成分表も詳しく見ることができる。
日本には木の芳香(アロマ)を楽しむ長い伝統があることは誰もが知るところだが、その“楽しみ方”の多くは火を用いる必要があり、現代の生活に継続的に取り入れるには躊躇する人も多いだろう。アロマオイルをはじめとした現代の生活になじむ方法で、「木の香り」を身近に、気軽に楽しむこと──それはもしかしたら、原点回帰とも言える側面があるのかもしれない。
【庭NIWA 247号掲載】
稲本正=著
発行/世界文化社グループ
定価/1,980円(税込)