本書は2012年に出版された『場所原論―建築はいかにして場所と接続するか』の続編だ。3.11を原点として書かれた『場所原論』は「、建築は場所とつながっていなくてはならない」という隈研吾の哲学を、18の設計実例をもとに収録した作品集であり教科書であった。
今回は更に論の歩を進め「建築はいかにして都市と統合できるか」と題し、建築と都市、建築内部と外部、そして大地と人の営みを「つなぐ」ことにフ ォーカス。2020年の東京オリンピック、メインスタジアム「新国立競技場」をはじめとした「大きな建築」の設計を担う著者が、建築を異物感なく、その土地とつないでいくことに対して、どのように試行錯誤してきたのかを示す、具体的な実地レポートの様相だ。
「大きさ問題」解決の糸口を探すべく新たな建築に挑戦していく過程を、19の設計実例から紹介。土地の状況観察から素材選択、利用者の想定される体験など著者の思考をトレースできる詳細な本文と共に、ふんだんな写真や平面図が掲載されているほか、周辺の広域地図も示されている。掲載資料からも、いかに都市との関連性を意識しているかがうかがえる。
著者は「大きな建築」の設計哲学のキーワードとして「粒子」「孔」「斜め」「時間」を抽出しており、実例紹介もその4カテゴリーに分けられている。建築史や経済史、思想史、科学史などを隈研吾の視点で横断的に旅することで「、つなぐ」に対する問題意識を共有し、この4つのキーワードに辿り着くまでの思考の旅を著者と共にすることができるだろう。
【庭NIWA 233号掲載】
隈研吾=著
発行/市ヶ谷出版社
2,400円(税別)