庭2019年春号No.234
連載-未来を植える人びと-第6回
取材・文=梶原博子


圧倒的在庫量と調達力 
生産者として使命感を抱いて

明治時代から現在に至るまで、4世代に渡って受け継がれてきた技術を生かし、緑化木の生産と販売を行う安藤苗圃。豊富な在庫を揃え、造園家の仕事を支える安藤将志さんに話を聞いた。

 「長野に山採りのいい植木をたくさん持っている生産者がいるんですよ」
 長野県安曇野市を拠点に活躍する造園家の國藤稔さんの案内で、安藤苗圃を訪ねた。
 「ようこそ、いらっしゃいました」
 そう言って築百年以上の立派な古民家の中で出迎えてくれたのが、同社4代目社長の安藤将志さんである。同社は明治20年代末に、将志さんの曾祖父に当たる安藤精一が創業。長野県東筑摩郡波田町(現・松本市波田地区)を開墾して、農地として野菜や山林種苗などの生産を開始した。
 「波田の地形は広大な段斜面が特徴で、北アルプスから発した梓川が大扇状地をつくる過程で形成された河岸段丘によるものです。この段丘面の表土はうすい腐蝕土で覆われていますが、その下は乗鞍岳の火山活動による波田ロームが、さらにその下には御岳山の噴火、爆発による小坂田ロームが分厚い層をつくっています。水はけが良く、適度に水を保つ土壌特性があり、これが種苗づくりに適していました。2代目の祖父の代に山林種苗に専念し、主にカラマツの種苗苗木を全国に出荷していました」と安藤さんは語る。しかし、大正から昭和初期にかけて需要が伸びる一方だった山林種苗だったが、・・・記事の続きは、庭No.234の紙版・電子版で。

葉の切れ込みが浅く、小さな手のひらのような形が可愛らしいコハウチワカエデ。
冬場に赤い実をつけるソヨゴ。安藤苗圃はソヨゴの在庫量日本一を誇る。
植木について熱く語る安藤さん(左)と國藤さん(右)。
真っ赤に色づいたハウチワカエデ。
高木のカエデを集めた圃場。11月中旬に訪れると、葉が落ちて地面を覆いつくし、その様子はまるで真っ赤な絨毯のよう。
しなやかな自然樹形のモミジを集めた圃場。
安藤苗圃の出荷場。11~12月はクリスマスシーズンに合わせてモミの出荷が増える。
波田地区独自の河岸段丘にある広大な圃場。棒状に刈り込まれたイチイは、長野県の旧家の垣根に使われていることが多い。
株立のソヨゴの仮植場。常緑で緑量が多く、雑木の庭づくりに欠かせない材料として人気を集める。
シラカバ畑。高原の雰囲気らしさが出るシラカバは長野県でよく使われる樹木のひとつ。
安藤苗圃で仕入れた自然樹形の木で構成し、國藤さんが手がけた住宅の庭。
安藤将志(あんどう・まさし)

安藤将志
あんどう・まさし|安藤苗圃代表取締役。1978年長野県松本市生まれ。2000年日本福祉大学情報社会科学部卒業。造園会社での3年の修行を経て、安藤苗圃就職。2010年同社代表取締役就任。現在、2~3千品種の落葉高木、常緑針葉樹から低木の移植物を中心に生産と卸売販売を行う。 2019年4月から6月まで行われる信州花フェスタの運営にも携わる。
安藤苗圃(長野県松本市)

       【地図から探す植木生産者】

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