公園にも「推し」という言葉がついに……と、本書を手に取り真っ先に感じた。“公園「で」遊ぶから、公園「を」育てる時代へ”、本書の最後で語られるこの言葉。明るく活用的な公園イメージが失われつつある一方、公園ボランティアが育てる推しの公園の存在。多様な活動事例とともに、そこで得られる楽しさや喜びをシェアしている。一人ひとりの公園との素朴な関係性を提案してくれる一冊だ。
日本には、小さな公園から森林や水辺を守る大きな自然公園などを含めて約11万もの公園があるという。その数は神社よりも多く、コンビニのおよそ2倍。そんな中、ユニークなアイディアで、地域の新しい役割を担おうとしている公園がある。「球根ばらまき植え」といった名物イベントがある公園や、都会の公園で本格的に芝を育てる「イクシバ!プロジェクト」など。「推し」が生んださまざまなゆるくて楽しい地域密着型の公園カルチャー。それらの活動の発端や内容、行政との連帯、参加者の公園物語が取材形式で記されている。活動を何から始めればいい? これってどうすればいい? そんな疑問に先輩たちが答えてくれるような本である。活動を応援し合える情報共有にも焦点が当てられ、SNSやアプリでつながる新しいネットワークにも注目できる。
自身が大切にする価値観や楽しさを感じながらも、社会性を伴う「推し」スタンスの公園活動。子どもの頃によく遊んだ公園は今どうなっているだろうか、そんなことを思い出しながら本書を読んでも楽しいかもしれない。
推しの公園を育てる!みんなの公園愛護会 椛田里佳・跡部 徹=著
発行/学芸出版社
定価/2,530円(税込)