東京農業大学造園科学科(以下、農大造園)は、前身の東京高等造園学校の開校から今年で100年を迎える。その記念誌として『時代をつくる造園家のしごと 東京農業大学造園科学科100周年記念』が発行された。企画から3年の歳月をかけて制作された本書は、100人超の造園家や教育者たちを中心に、その仕事とプロフィールがビジュアルと共に紹介されている。
紹介されているのは、造園界の歴史上の人物で農大造園の創設にも深く関わった、上原敬二、龍居松之助、井下 清に始まり、教育者として現在の農大造園の礎を築いた永見健一、平山勝蔵、戸野琢磨、江山正美。さらに造園家として、中島 健、荒木芳邦、井上卓之、中根金作、ランドスケープアーキテクトの草分けとして伊藤邦衛、野沢 清、鈴木 崇、井上芳治といった面々が続き、マネジメント、植物・緑化の専門家といった「造園」を網羅するジャンルで活躍してきた卒業生たちだ。また、造園・ランドスケープの裾野を広げたパイオニアたちとして、編集者・作家、地方自治体の首長、写真家・絵本作家といった人たちの活躍も紹介されている。
実は本書の白眉は、単なる人物紹介にとどまらないところにある。全体を通して見ると、日本の近現代造園史の概要が掴めるのだ。それは、明治初期の太政官布達第16号に始まる日本の近代造園のあけぼのから現代に至るまでの造園界の大きな流れと、農大造園が歩みを共にしてきたからに他ならない。各章の巻頭文が社会の動きと共に卒業生の活動を俯瞰し、分かりやすく解説している。
時代をつくる造園家のしごと「農大造園の100年と100人のしごと」企画チーム=編
発行/建築資料研究社
定価/3,850円(税込)