日本の自然観や「日本庭園」が内包する“平和”と“自然”は、混沌とする地球社会のあり方や、自然共生社会を目指すグリーン・エコライフへの知恵を提供できるのではないか、という著者の思いから生まれた本書。日本の造園学界をリードし、庭園と「農」を基調とする環境学・造園学において重要な研究を残してきた著者が「日本庭園の心と技」を包括し、日英2か国語版にこだわりを持ちながら、日本庭園を世界と共有する。
翻訳は、著者の思いを深く理解するネイティブライターによって行われている。その背景には、従来の英語直訳本では日本文化を知らない人には理解が難しいという課題があった。その読者にも分かりやすくするため、意訳を大切にし、写真や図、キャプションにも配慮されている。そして日本の自然観や精神性を深く掘り下げつつ、庭園の本質から歴史、空間・景観構成の手法、構成要素と細部の技法、また現代に残る名庭園の紹介まで大局的な視点で解説されている。本書は世界中の読者に向けて、「日本庭園の心と技」への理解を深めるとともに、日本庭園が内包する多様な要素が現代の社会問題と向き合うインスピレーションにつながることを喚起する本である。
SDGsを始めとした世界の“環境意識”や、争いが絶え間なく続く世界情勢の中での“平和”を求める声に、日本庭園が内包するものがどのように関係していくのだろうか。言語を横断しながら日本庭園を再考し、思考を解きほぐすことができる一冊である。
進士五十八の日本庭園進士五十八=著
発行/市ヶ谷出版社
定価/3,300円(税込)