ふたつの“専門”の視点から 日本庭園を読み解き語る『日本庭園を読み解く ~空間構成とコンセプト~』

本書の前書きでは、近年海外から注がれている日本の庭園文化に対する熱い眼差し、特に「禅の庭」に向けられている“憧れ”について、戸田が実感のこもった言葉で述べている。一方で、日本のランドスケープアーキテクトとして、自国の文化である日本庭園を実は深く知らないのではないか。そんな思いが発端となって本書は生まれた。

「日本のランドスケープデザインの原点は日本庭園にある」と確信する戸田芳樹と、重森三玲に入門し桂離宮を始めとする名園の調査に尽力してきた野村勘治。知己の二人が、桂離宮や後楽園といった名庭園を取り上げ、その空間構成とコンセプトについて語り合いながら読み解いていく。

ランドスケープと日本庭園。隣同士であるような、また包括的にも語られるこれらふたつの分野の専門家二人が、お互いのプロトコルを擦り合わせながら、“翻訳”的な対話を進めていく。この過程では、デザイン面やディテールはもちろんのこと、風土や時代背景、利用用途や人の導線などについて、ゾーニングなど、ランドスケープ・プランニングで一般的な手法を用いて語り合う。

読者は、対話する二人のうち理解しやすい視点に寄り添いつつ、もう一方の思考や手法の特徴に、改めて気付かされることになるだろう。日本庭園という総合芸術を肴に、ふたつの文化とふたつの手法、時代と思考の交差点で遊ぶことができる一冊となっている。
【庭NIWA 244号掲載】

日本庭園を読み解く ~空間構成とコンセプト~ 
戸田芳樹・野村勘治=著
発行/マルモ出版
定価/1,320円(税込)

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