パブリックスペースの在り方を問う14事例を、忽那裕樹・平賀達也・熊谷玄・長濱伸貴・篠沢健太が厳選し、詳細に解説する本書。南池袋公園をはじめ、宅地、駅前、街路などの都市空間、なんばパークスといった商業施設から、トコトコダンダンやアザメの瀬など水辺の施設や空間まで、多様な場所が取り上げられている。
土地がもともと持つ力や歴史、経緯から課題を紐解きコミュニケーションを重ねて形を模索するプロセスが詳細に綴られ、ふんだんに写真が掲載されているのは勿論、施工に関しても設計図や断面図、詳細図と共に、支柱の直径や石の産地なども開示されている。まえがきで篠沢氏が「本書の企画は、ディテール集をつくるというアイデアから始まっている」と書く通り、想像以上の“ディテール”が詰め込まれており、「読める設計資料集」として楽しめる。
一方、「パブリックスペースとは何なのか」「どうあるべきか」という大きな問いは、本書を通じて、読み手に対して問いかけられている。この問いかけの裏側には、この現代において公共空間を“つくる”のは、決して設計者や行政だけではなく、これまで使い手と括られていた、“地域住民”、“一般市民”と呼ばれるような層にも広がっている状況を反映したものではないかと感じさせる。今のパブリックスペースを共に“つくる”立場として、誰もが参考にできる一冊ではないだろうか。
【庭NIWA 244号掲載】
忽那裕樹・平賀達也・熊谷玄・長濱伸貴・篠沢健太=編著
発行/学芸出版社
定価/3,850円(税込)