850点余の写真で描く名庭園の思想と世界『全貌 日本庭園』

本書の著者は、重森三玲とその弟子齋藤忠一に面識を得て以来、全国の庭園を訪問し研究を重ねてきた。

2009年に上梓された『重森三玲 庭園の全貌』では、113という膨大な数にのぼる三玲の庭園を掲載。拝見取材の難しい非公開個人邸宅の庭園を多数含む出版には、著者のなみなみならぬ熱意と決意が溢れていた。

新たに出版された本書では、第一部にて日本全国にある飛鳥時代〜昭和の庭園から、造形や斬新さに着目し、100庭園を選出して紹介。著者自ら撮影した850点余の写真や水墨画、文献を用い、思想的背景や特徴的な技法について解説した。

第二部では、庭園空間のもつ背景としての宗教的な思想と、庭園とのつながりを解き明かす。神道、神仙思想、極楽浄土思想、禅宗思想、天台宗、真言宗、浄土真宗、法華宗など、それぞれの背景と庭園造形が対となって具体的に紹介されている。

さらに「地割」に言及することで、その形成についての歴史的経緯についても語っている。
多様な日本庭園の全体像を概観するべく全国の庭園に足を運び、独自の鑑賞眼を養った著者が編む、資料集成ともいえる意欲作。【庭NIWA 243号掲載】

全貌 日本庭園 象徴庭園から抽象枯山水へ 
中田勝康=著・写真
発行/学芸出版社
定価/6,160円(税込)

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