2020年に創建100年を迎えた明治神宮。現在70haに及ぶ豊かな森に覆われる神宮の内苑からは想像も付かない程、100年前の同地は荒野であった。当時、国家プロジェクトとして「100年先を見据えた天然林を人工的につくる」ことをミッションに、造園学の研究者や技術者が集められ、計画書『明治神宮御境内林苑計画』(通称『林苑計画書』)が作成された。
その計画に基づき、人の手で林苑が造成、育成され、今日見られるような豊かな森となったのだ。
「明治神宮」には、神社空間であることは勿論、庭園空間、公園空間であることも求められたため、当時の公園設計者として名高い本多静六をはじめ、造園学の黎明期を支え林学に長けた上原敬二らだけでなく、「苑」の部分には園芸学系の研究者が集い、造営には日本の植木職人達の技法がふんだんに用いられた。
樹木特性を考慮し植栽変化を織り込むことにより、「場」に相応しい林相に自ら更新していくよう、人手をかけない管理計画も盛り込まれている。
本書では、造園学史や緑地学、造園土木の研究者、ランドスケープアーキテクト、樹木医、公園計画・設計者など、専門家12名がそれぞれの視点から『林苑計画書』を読み解き、造成時にまつわるエピソードや、森の見どころ、楽しみ方を、豊富な図版を使って分かりやすく紹介している。
100年前に存分に詰め込まれた創意工夫を振り返り、この先の100年に思いを馳せるガイドブックとしても楽しめそうだ。【庭NIWA 243号掲載】
明治神宮とランドスケープ研究会=著
発行/東京都公園協会
定価/1,320円(税込)