毎号ひとつの文化にまつわるテーマを日本と中国で比較、紹介しているという日中文化交流誌『和華』にて、2019年10月に発行された23号では庭園文化研究家の田中昭三氏が全体構成し、日本と中国の「庭」の関連や違いを取り上げた。造園の背後に横たわる思想について、また様式や景物について、写真やイラストをふんだんに交え、具体的で分かりやすい紹介となっている。
古代は奈良時代の東院庭園から、平安時代の浄土式庭園、鎌倉・室町の禅宗庭園、江戸大名庭園、そして東日本大震災復興祈念公園まで、登場する庭園は時代を超えた幅広いもの。禅僧や朱舜水といった大陸からの文化思想の担い手たちの影響はもちろんのこと、日本庭園各所に見られる“中国趣味”から、かつての中国への憧れと思想的影響、そして独自に進化した部分を再確認することができるだろう。
一方で現存する中国庭園と日本庭園の差分についても、水の景、石の景、植栽、景物とのくくりで紹介があり、「池泉」の違い、「枯山水」と「假山(ジアシャン)」の対比、橋の造形の違いなど、中国庭園の特徴を表す写真も多数紹介されている。
本誌は全てのテキストが日本語と中国語の併記になっている。近年両国を往復しながら仕事をするビジネスパーソンが益々増える中、両国に深く根差す庭園文化をそれぞれの言葉で学ぶにもより良い指南書となるのではないだろうか。
【庭NIWA 238号掲載】
発行/アジア太平洋観光社
788円(税別)