桂離宮に学び、“いま”を見る 敷石と飛石の列島縦断『桂離宮に学ぶ 敷石と飛石の極意』

長年、庭園の取材を日本全国で行ってきた著者だからこその視点で、庭の中でもあえて取り上げられることは少ないと言える「敷石」「飛石」にフォーカスした本書は、石の多彩な表情をとらえて教えてくれる。

本書はまず始めに、桂離宮の敷石と飛石に造形美を学ぶ。御幸道からはじまり、外腰掛から松琴亭へ。周囲に広がるはずの風景に逃げず、あくまで視線は次々と足下に現れる石のみへ向けられている。著者の集中力のある視線を、そのまま辿るような体験ができるだろう。

また著者が、日本の気候、風土、雨量の変化などを踏まえた上で「、新しい感覚」と「伝統精神」を取り入れたいとテーマをたて、高橋良仁氏が考案した敷石と飛石の制作過程が「新感覚 敷石と飛石の試み」として公開されているのも興味深い。

さらに本書では、日本列島の北から南まで、現代に生きる作庭家たちの手による“いま”の敷石・飛石を紹介している。秋田の福岡徹氏、宮城の小畑栄智氏など、本誌にも登場し知られている作庭家12名が、それぞれの技を披露してくれる。2018年に日本庭園協会賞を受賞した福島県の新肇氏が、受賞作である「折橋邸」庭園を解説しているのも見所のひとつ(受賞の様子は本号106頁に掲載)。また日本全国の作庭者31名の故郷の敷石・飛石についてのアンケートがあり、今の現場の空気を伝えてくれる回答が揃っている。
【庭NIWA 234号掲載】

桂離宮に学ぶ 敷石と飛石の極意 
豊藏均=著
発行/講談社
1,800円(税別)

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