庭2023年春号No.250
連載-未来を植える人びと-第22回
取材・文=梶原博子


産地のネットワークを活かし
植木の新たな価値を引き出す

日本四大植木産地として知られる愛知県稲沢市。生産者や卸売業者が集積する地域の植木圃場の在庫状況を把握し、全国の造園家の要望に応えるヤマトクの山内佑斗さん。陽の目が当たらない植木を引き取り、新しい価値を生み出す管理への思いを聞いた。

 愛知・稲沢は、安行(埼玉県川口市)、山本(兵庫県宝塚市)、田主丸(福岡県久留米市)と並ぶわが国の植木の四大生産地のひとつだ。その歴史は鎌倉時代に遡り、柏庵禅師が中国で学んだ柑橘類の接ぎ木の手法を稲沢の地に伝え、広めたのが始まりだと伝わる。ヤマトクは、植木市場があり、生産緑地が集積する矢合地区から西方にある祖父江地区で、四代にわたり植木の生産と卸売業を営む。現在、社長の山内則彦さんと共に植木づくりに精を出しているのが、四代目の山内佑斗さんだ。

地域の在庫を動かす

「この仕事に就いて4年目になります。最近になってこの仕事の面白さが分かり始めてきました」と語る山内さん。ヤマトクは曾祖父が創業し、植木苗木の生産から始めたが、そのうちに原木を仕立て直して庭木として市場に卸すことが主流となっていった。父が引き継いだ頃は、高度経済成長期で日本全土で公共緑化木の需要が高まり、稲沢はサザンカやカイヅカイブキなどの垣根材の一大生産地となり、ヤマトクでもこれらの生産に力を入れていたという。
 植木生産農家の家に生まれた山内さんだったが、幼少の頃から家業を継ぐことを強制されていなかったが、父の母校でもある東京農業大学地域環境科学部造園科学科に進学。学生時代は、大学の収穫祭の委員長を務めるなど青春を謳歌した。大学卒業後は、不動産会社に就職して緑化事業部で自社が管理する建物の施工管理を担当。「入社から8年経ち、30歳を迎えた時に、自分を育ててくれた家と植木産地である地元に恩返しがしたいという思いが湧き上がり、会社を退職して家業に入りました」と山内さんは語る。
 山内さんが植木の卸売業を営む上で大切にしているのは、・・・記事の続きは、庭No.250の紙版・電子版で。

苗木の段階から、自然な樹形を畑で仕立てながら管理。写真は繊細な曲線を持つフォルムに仕立てた常緑樹のウバメガシ。
マンションなどの下草として使われることが多いマホニアコンフューサだが、大きく育った枝を間引くと、オージープランツのような雰囲気の庭木になる。
長野県の林業家の山で採れた実生のマツ。
ヤマトクの圃場。祖父江地区内に大小合わせて15箇所ほどの植木圃場が点在する。日当たりや土質に合わせて管理する植物の種類を変えている。
株立ちのシマトネリコやヤマボウシなどの常緑樹が並ぶ圃場。
大きく成長して規格から外れたヒイラギナンテンを引き取り、ダイナミックに剪定してユニークな樹形へと仕立て直した。
山内佑斗(やまうち・ゆうと)

山内佑斗
やまうち・ゆうと│1989年愛知県稲沢市生まれ。 2011年東京農業大学地域環境科学部造園科学科卒業。8年3ヶ月間の会社員生活を経て、2019年にヤマトクへ就職。愛知県稲沢市祖父江地区で15箇所の圃場(合計約2.5ha)で、多種多様な植木を育て管理しながら、地域の植木の魅力を伝え、造園家の庭づくりをサポートする。
ヤマトク(愛知県稲沢市)

       【地図から探す植木生産者】

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