大石武学流の成田氏庭園など4件を新たに名勝指定、登録記念物の名勝地関係には重森三玲による横山氏庭園など4件を新登録/文化審議会答申

文化審議会(佐藤信会長)は11月15日、成田氏庭園(青森県弘前市)など津軽地方に特徴ある作庭技法を継承した大石武学流庭園3件を含む計4件を名勝に、重森三玲が造った横山氏庭園(三重県三重郡菰野〈こもの〉町)など5件を登録記念物に(うち名勝地関係は4件)、それぞれ新たに指定するよう萩生田光一文部科学相に答申した。また、埼玉古墳群(埼玉県行田市)を特別史跡に、小山崎遺跡(山形県遊佐町)など15件を史跡に新指定することも求めた。このほか、特別史跡3件、特別天然記念物1件、史跡23件、名勝2件を追加指定している。近く答申通り官報で告示される見込み。

名勝指定は、文化財保護法により芸術上や観賞上の価値の高い庭園などについて文部大臣が行う。登録記念物は史跡、名勝、天然記念物という指定を補うために設けられた文化財保護法に基づく制度で、保護すべき意義があると思われる文化財を対象としている。

名勝の新指定4件と追加指定2件、登録文化財の名勝地関係4件に対する文化審議会の答申内容は次の通り。

名勝

●成田氏庭園/青森県弘前市
江戸時代末期から近代にかけて津軽地方に特徴ある作庭技法を継承した大石武学流庭園の優秀な事例のうち、流派の作庭規範を典型的に示しているとともに全体構成を良好に伝えている。大石武学流宗家5代の池田亭月の代表作として重要なもの。
(昭和7年に池田亭月によって作庭された庭園で,大石武学流の規範をよく示している)
●對馬(つしま)氏庭園/青森県弘前市
江戸時代末期から近代にかけて津軽地方に特徴ある作庭技法を継承した大石武学流庭園の優秀な事例のうち、観賞軸線を斜めとする点に特徴を有する。大石武学流宗家5代の池田亭月から宗家6代の外崎亭陽(とのさきていよう)への作庭流儀の継承を考える上で重要なもの。
(池田亭月の作庭を基礎として外崎亭陽が手を加えた大石武学流庭園で,斜めの観賞軸線に特徴がある)
●須藤氏庭園(青松園)/青森県弘前市
江戸時代末期から近代にかけて津軽地方に特徴ある作庭技法を継承した大石武学流庭園の優秀な事例のうち、明治時代末期に宗家4代の小幡亭樹(おばたていじゅ)により作庭されたと伝えられる庭園。座観(ざかん)と逍遥(しょうよう)の観賞形式を併せ持ち、亭樹の作庭技法をよく示している点で重要なもの。
(明治時代末期に作庭された大石武学流の池泉庭園で,小幡亭樹の作風を知る上で重要なもの)
●哲学堂公園/東京都中野区
哲学館(後の東洋大学)創始者の井上圓了(いのうええんりょう)が、精神修養の普及を目的として、ソクラテス、カント、孔子、釈迦を祀った四聖堂を明治37(1904)年に建築した私設公園を起源とするもので、昭和時代初期にわたって造営された哲学を主題とする都市公園の固有な事例。
(哲学者井上圓了が、明治時代末期から精神修養を目的に造営した公園)

名称の追加指定および名勝変更

●多賀大社庭園/滋賀県犬上郡多賀町
既指定の奥書院庭園の背景となっている神苑のほか、奥書院庭園と連続する東庭、奥書院にも面する参集殿中庭等、境内地の景観を形づくっている部分を追加指定して一体的な保護を図り、名称を「多賀大社庭園」に変更する。
● 英彦山庭園/福岡県田川郡添田町
名勝旧亀石坊庭園に、英彦山の坊跡に良好な状態で遺存する旧座主院御本坊庭園、旧座主院御下屋庭園、旧政所坊庭園、旧泉蔵坊庭園、旧顕揚坊庭園の5庭園と英彦山神宮旅殿庭園を追加して、「英彦山庭園」の総称の下に、一連の庭園群として一体的に保護するもの。

登録記念物の新登録 名勝地関係

●染谷氏庭園/千葉県柏市
江戸時代に名主役を務めた染谷氏の庭園。主屋に南面する庭園、長屋門等の建造物、旧畑地のほか、アラク山と呼ばれる屋敷林等が一体となって、幕末から近代にかけて整備された旧家の屋敷地の地割や庭園の様子をよく伝えている。
(幕末から近代にかけて,建造物,屋敷林等と一体的に整えられた旧家の庭園)
●魚津浦の蜃気楼(御旅屋〈おたや〉跡)/富山県魚津市
発生地域や時期が限定される稀有な上位蜃気楼を生じる魚津浦の沿岸において、寛政9(1797)年に加賀藩主前田治脩が参勤交代で滞在した際に出現した蜃気楼を描かせた「喜見城之図(きけんじょうのず)」が残されている。その滞在場所であった御旅屋の跡地を登録するもの。
(蜃気楼の名所で、江戸時代に観賞記録が史料として残る御旅屋跡を登録するもの)
●長峯氏庭園( 旧河原氏庭園)/長野県長野市
江戸時代の松代城下に整備された3系統の水路を現代まで保ち、簡素なつくりの中に武家の庭園の趣を伝える池泉庭園。西に象山を控え、門の前を沿道の水路である「カワ」、敷地内を「泉水路」と畑地の水路である「セギ」が通る。
(江戸時代の城下町に整備された水系を保ち、武家の庭園の趣を伝える池泉庭園)
●横山氏庭園/三重県三重郡菰野町
菰野地域の旧家である横山氏が、昭和43(1968)年に書院の新築と茶室の移築を行った際に,重森三玲に設計を依頼して造られた庭園。心字形に築山を築いた表庭、斜線状の区切りを設けて間に赤砂と白砂を交互に敷いた裏庭等が特徴的である。
(菰野地域の旧家である横山氏の居宅に、昭和43年に重森三玲が造った庭園)

新指定・新登録の答申物件については、以下の文化庁のサイトを参照

http://www.bunka.go.jp/index.html

http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/1422552.html

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