庭2018年春号No.230
連載-未来を植える人びと-第2回
取材・文=梶原博子


江戸時代から受け継がれる 
一子相伝のモミジ生産

国内有数の植木生産のメッカ、埼玉県川口市の安行地区で、江戸時代から続くモミジ生産農家「小林槭樹園」。一子相伝の継木の技術によってしだれモミジ「流泉」や交配による「秋華」など、個性豊かな品種を生み出している。紅葉が始まりかけた初秋、約300種のカエデ科植物が集まる農園を訪ねた。

 日本植木四大生産地の一つとして知られる埼玉県川口市の安行地区。江戸時代から続く小林槭樹園は、モミジを専門とする生産者として全国的知名度を誇る。
 「元々、安行には江戸に向かう最後の宿場町である新井宿があり、うちの祖先は農家で趣味でモミジを収集していたところ、旅人から『こんなモミジを集めて欲しい』という依頼をもらうようになって植木の商売を始めたらしいです。今の屋号を付けてモミジ専門の生産と販売を始めたのは昭和初期の祖父の代からです。その後、父が受け継ぎ、年前から私も家業を手伝って現在に至ります」。そう語るのは、専務の小林治人さんだ。

 千人以上の観光客が訪れる農園

東京農業大学短期大学部で造園や園芸について学び、卒業した歳の時に「小林槭樹園」に就職。モミジ一筋に生産と向き合ってきた小林さんの下には、・・・記事の続きは、庭No.230の紙版・電子版で。

まっすぐ伸びる品種のモミジを親木としてしだれモミジを接ぎ木した「流泉」。傘のような樹形の下にベンチをつくり、一般客の休憩所とした。ベンチに座っているのは農園の看板犬。
プランターに植えた流泉。
モミジは半日陰を好むため、小林槭樹園の農園では高木のモミジで木陰をつくり、その下で生産をしている。
園芸用に楽しめるハンギングタイプの流泉。真ん中のプランターの底から生えたユニークな枝ぶりのモミジは料亭などで人気がある。
葉の軸の色が赤いものは赤く紅葉し、黄色いものは黄色く色付く。夏場に紅葉が分からない時は、この軸を見れば樹種を選ぶ時の参考になる。
紅葉の見頃はわずか3日程度。写真は一昨年の紅葉シーズンの小林槭樹園の遠路。緑、黄色、オレンジ、赤のグラデーションが美しく、全国から多くの観光客が見学に訪れる。
春に赤や黄色に新芽が芽吹く春モミジ。秋の紅葉が望めない環境に植える場合、春モミジを勧めているという。
春にオレンジ色に芽吹く品種「茜空」。
小林槭樹園の農園で誕生した斑らな色合いがユニークな新品種「秋華」。
小林治人(こばやし・はると)

小林治人
こばやし・はると|1979年埼玉県生まれ。2000年東京農業大学短期大学部環境緑地学科卒業。同年入社。小林槭樹園は、江戸時代に珍しいモミジを蒐集していた祖先が植木生産を始めたとされる。昭和初期に小林さんの祖父が「小林槭樹園」と看板を掲げ、モミジ専門の卸売販売と生産を開始。現在、 3000坪の農園で常時300種類のモミジを取り扱う。農園は1年を通して一般に開放し、園内を自由に散策できるとあって観光客に人気のスポットとなっている。
小林槭樹園(埼玉県川口市)

       【地図から探す植木生産者】

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