「コミュニティデザイン」「まちづくり」。これらの言葉は、今や日常的に使われているものの、どこか輪郭が曖昧なままである。1950年代から始まったまちづくり、1970年代に生まれたコミュニティデザイン。本書は、それぞれが時代とともにどのように発展し、どんな役割を果たしてきたのかをたどる。コミュニティデザイナー・山崎 亮氏と都市計画家・饗庭 伸氏が、その仕事の本質を探るべく、歴史を振り返りながら交わした往復書簡である。
2人は書簡の中で、時代を通じてコミュニティデザインに取り組んできたパイオニアたちにインタビューに出かけていく。1970年代の都市計画が “ハード”から“ソフト”へと意識を向け始めた時代から始まり、住民主導のコーポラティブ住宅や震災後の神戸のまちづくりといった事例を通して、コミュニティデザインの意味や役割が語られていく。また、「なぜ私たちがワークショップをするのか」という問いは、業界を超えて読者に、他者との協働の意味を再認識させる。つくらずして、動かす仕組みや仕掛けをつくるコミュニティデザイン。両者の学術的な思考と実践的な視点が交差する中で、時代とともに変化する多様な「つながり」の姿が浮かび上がる。
本書は社会学の視点を交え、コミュニティデザインにおける「人の変化」を考察できる点も興味深い。現代は地理的なものだけでなく、インターネットを介する複層的なつながりを形成しつつある。言葉は時代と共に変化する。これからのコミュニティデザインがどのように展開していくのかを考察してみるのも面白いかもしれない。
コミュニティデザインの現代史まちづくりの仕事を巡る往復書簡
饗庭 伸、山崎 亮=著
発行/学芸出版社
定価/2,640円(税込)