庭2023年冬号No.253
連載-未来を植える人びと-第25回
取材・文=梶原博子
造園家の経験と植物の知識を武器に
植物のある空間の魅力を伝えたい
20代の10年間、造園会社で働き、30代で西畠清順さん率いる「そら植物園」に飛び込んだ谷口輝樹さん。並々ならぬ行動力と探究心を武器に、個性豊かな植物を扱うナーセリーを運営する姿に迫った。
造園家からの転身
JR名古屋駅から東海道線快速で2駅、約12分の乗車で到着したのが、JR共和駅だ。待ち合わせ場所のロータリーへと向かうと、白いトラックから、「ようこそ大府市へ」と笑顔で出迎えてくれたのが、今回訪問するTAMARIの谷口輝樹さんだ。そこから車を10分ほど走らせた場所に、谷口さんの圃場がある。まず目に飛び込んできたのが、大量の古木のオリーブ。その周囲には、ソテツやメラレウカ、バンクシア、アガベなど、ユニークな造形が目を引く個性豊かな植物ばかり。「最近は庭をつくる人が減っていますが、緑が欲しいという人は多い。そういう人たちに1本でも様になるシンボルツリーを提案したいと思っています」と谷口さんは話す。
愛知県の植木供給地と言えば稲沢市が有名だが、大府市内で谷口さんのように植木圃場を持つ業者はほとんどない。「この辺りは昔からぶどうの生産が盛んで、他には野菜をつくる農家が多く、この場所は元々妻の祖父が持っていた畑を譲り受けて圃場にしたのです。稲沢は水はけが良いから植木の産地に適しているけれど、この辺りは地表から3cmほど掘ると粘土質の地層になっていて、水はけが良くありません。それもあって、うちでは植木は全て鉢植えで管理しているんです」
愛知県常滑市で生まれ育った谷口さんは、 20代の頃は地元の造園会社に勤め、庭づくりに明け暮れた。独立して2年ほど造園家として活動していたが、そのまま造園の仕事をしていくことに疑問を感じ始めたという。そんな時、偶然つけたテレビに、プラントハンターの西畠清順さんの活動を追ったドキュメンタリー番組を見て、植物を扱う仕事に興味を引かれた。「『こんなところで働いたら面白そうだな』と独り言を呟いたら、・・・記事の続きは、庭No.253の紙版・電子版で。
谷口輝樹
たにぐち・てるき│1984年愛知県常滑市生まれ。高校卒業後、地元の造園会社に勤務した後、造園家として独立。30歳の時に植物を学びたいとそら植物園に入社。2019年同社退社、同年「TAMARI」設立。愛知県大府市の約4000㎡の圃場に約500種類の植物を扱う。
TAMARI(愛知県大府市)