“使えない”なら「庭」じゃない!? 『京都発・庭の歴史』

一般書から論文に至るまで、庭について語られる内容の多くはその「景観」についてであり、評価もそれに準じて与えられてきた。文化庁も記念物について「庭園(中略)などの名勝地で我が国にとって芸術上または鑑賞上価値の高いもの」と定めている。 “鑑賞”という視点での評価故に、不当に価値を貶められてきた庭もあるが、ようやく近年、利用実態にフォーカスを当てた研究も増えつつある。

京都市文化財保護課に所属し、嵐山や醍醐寺三宝院、龍安寺方丈の庭などの「名勝」を担当してきた専門技師である著者の、これまで積み重ねた仕事と研究の集大成とも言えるのが本書だ。絵図や図面、写真をふんだんに取り入れ、当時の人々が庭に求めた「利用方法」のイメージを想像させやすくする工夫もされている。

一般書として書かれた本書により「利用価値」の側面に光が当たることで、アミューズメント“パーク”としての庭の価値はますます広く認識されることだろう。平安時代から近現代まで長い時を駆け抜けて庭を概観することは、その存在の意味に改めて目を向ける機会となりそうだ。
【庭NIWA 241号掲載】

京都発・庭の歴史 
今江秀史=著
発行/世界思想社
定価/2,400円(税込)

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