庭と建物を一体に考え、住宅をつくり続けてきた建築家、横内敏人の作品集。
「家のプランを考える時は、まず庭から考え始めることが多い」(本文p.258)と述べる程に庭が好きな著者が設計する、ぬくもりを感じさせる洗練された木造住宅建築には、生命を吹き込む樹木が不可欠な存在だ。紹介される26事例は、それぞれ大画面での写真がふんだんに掲載されているだけでなく、写真と同様のページ数を割き、建築の詳細な図面や断面図が用意されている。同様に庭園設計図面も掲載されており、建築家により詳細な樹種の指定がされていることが見て取れる。
さらに、所々に挿入されている手描きのラフスケ ッチが印象的だ。常に緑の存在が建築と共に描かれている。室内イメージ図であっても窓の外の景色があり、そこには必ず樹木の存在が描き込まれる。建築を取り囲む木立を描く空気が踊るような鉛筆のラインに、描き手の喜びと楽しみを感じられるだろう。
美しい作品集としてだけでなく、精緻な資料集としても手元に置いておきたい1冊だ。
【庭NIWA 241号掲載】
横内敏人=著
発行/学芸出版社
定価/15,000円(税込)