庭2020年冬号No.241
連載-未来を植える人びと-第13回
取材・文=梶原博子
1本の個性を大切に植木の魅力を多角的に発信する
東京と横浜の中間に位置する川崎市の都市樹木農家・内田植木。若き5代目の内田皓基さんは、生産の傍ら、圃場の樹木や根っこをイベントや個展に貸し出すサービスを始め、樹木に新たな価値を創造している。
「神奈川県川崎市で、面白い取り組みをしている植木生産者がいますよ」
そういって、前号で紹介した植物好きが集まるプラットフォーム「WOODSMART」の伊藤司貴さんが紹介してくれた内田植木を訪ねた。東急田園都市線鷺沼駅からバスで10分ほど走った地区に降り立つと、住宅街の中に野菜畑や植木畑などの生産緑地が点在している。その一角に内田植木の看板を見つけた。
「ようこそ!」と明るく出迎えてくれたのは、内田植木の5代目・内田皓基さんだ。
「先祖が植木屋を始めたのは明治時代と聞いています。この地域は江戸時代に大名屋敷や商家に納めるマツやナラの苗木を生産していたといい、創業した先祖は苗木の生産からスタートしたそうです。戦時中は一時期野菜農家に転じましたが、戦争が終わり、祖父が35歳の時に、イロハモミジやシイノキ、イヌツゲなどを実生から育てる植木生産を「内田植木」として始めました。父が就農して、時代に合わせて当時庭木として人気を集めていたツゲや門かぶりのマツなどの仕立物をつくる時期を経て、自然系の樹木の需要が増えたことから、シラカシやアオダモなどの雑木類を生産するようになりました」と内田さんは話す。
樹形にこだわった生産
この地域は高温多湿、関東ローム層の肥沃な土壌で、元々野菜や植木生産に適した土地だったが、酸性度が強かったことから戦時中の野菜づくりのために大規模な土壌改良が行われ、女性でも力を入れずに土が掘れるほどふかふかでより管理がしやすい土へと生まれ変わり、・・・記事の続きは、庭No.241の紙版・電子版で。
内田皓基
うちだ・ひろき| 1991年神奈川県川崎市生まれ。 2014年東京農業大学地域環境科学部造園科学科卒業。同年家業である内田植木に就職。2015~2016年植木卸売販売会社での研修期間修了の後、家業に入る。2haの圃場で、落葉広葉樹、常緑樹など雑木とオージープランツを中心とした約60品種の植木生産を行いながら、イベント用に圃場の植木のレンタルサービスも行う。
内田植木(神奈川県川崎市)