庭2020年春号No.238
連載-未来を植える人びと-第10回
取材・文=梶原博子


人とのつながりを大切に 
技術の研鑽を積む若き生産者

日本屈指の植木産地で約150年5代続く植木生産・卸売業を営む甚平植木。代々受け継がれてきた仕立ての技術と、修業先で身につけた高木の立て込み技術を武器に、植木の魅力を発信する甚平植木5代目の今里健吾さんを訪ねた。

日本三大植木産地の一つとして知られる兵庫県宝塚市。近年は宅地化や後継者不足により、植木生産農家の数は減少しているが、時代に逆行するように新たな販路を築いて躍進するのが、この地で5代続く甚平植木だ。
 「創業は明治元年頃で、今150年ちょっと過ぎたところですね。屋号の“甚平”は初代の名前なんですよ」と話してくれたのが、甚平植木5代目の今里健吾さんだ。創業当時は盆栽を扱っており、生産は鉢物中心でメインに育成していたのはマツだった。その後、時代に合わせて鉢物だけでなく露地物の品目が増えていく。健吾さんの祖父の代では、出雲から山出ししてきたマツを仕立てて庭木として販売、父親の代は高度経済成長期からの流れを受けて公共緑化樹の生産と卸売業がメインだったという。
 「僕が生まれた時は祖父の代で、この辺り一面はマツの圃場でした。当時従業員が10名程いました。物心ついた頃に職人がマツの仕立て用に使う竹を編んでいたのをうっすらと覚えています」
 そんな健吾さんは高校時代はパイロットに憧れていて、父親も「絶対に継いでくれ」とは言わなかった。大学受験の際、進路に迷ったが家業を継ぐことを選び、東京農業大学造園科学科へ進学する。偶然、同期には健吾さんと同じ植木生産者の2代目や3代目、家業が造園会社という健吾さんと境遇が近い同級生がいて、多くの友人に恵まれた。現在も仕事での交流は頻繁にあり、お互いに・・・記事の続きは、庭No.238の紙版・電子版で。

第60回兵庫県・宝塚観賞植物品評会にて、約300点の中から最優秀賞にあたる農林水産大臣賞を受賞した推定樹齢70年の「根上りのクロマツ」。
事務所前の圃場に植えられているレイランディ。
庫県丹波市にある圃場。写真はケヤキ畑。
大阪市内の商業施設での全長17mのセンペルセコイアの立て込みの様子。
全長12m、重さ11tの株立のクロガネモチの立て込み。大型クレーンを使い、慎重に作業を行う。
3のセンペルセコイアの運搬風景。高木の立て込みには枝が折れないように養生する技術と走行中周囲にぶつからないようにハンドルを裁く高い運転技術が必要になる。
仕立て物の出荷。近年は海外からの需要が高く、高値で取引されている。
今里健吾(いまざと・けんご)
今里健吾

今里健吾
いまざと・けんご|1984年兵庫県宝塚市生まれ。2007年東京農業大学地域環境科学部造園科学科卒業。2年半造園会社で修業後、2009年に家業に入る。現在約100種類の庭木を扱う。60~70年を超える仕立て物、15mを超える高木の立て込みが得意。全国各地のネットワークを駆使して、スピード感のある樹木調達を目指す。
甚平植木(兵庫県宝塚市)

       【地図から探す植木生産者】

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