小堀遠州を生み出した長浜、 湖北に息づく“お庭”拝見 『ながはまのお庭 総集編』

長浜そして琵琶湖湖北の家々に、今も息づく庭園の数々。寺院や神社に留まらず、個人邸宅、商家の奥座敷に面して配されている「生活に密接に根ざす庭」は、その存在を外から知ることは難しい。2009年、京都大学の学生たちが長浜の旧市街地、約1000軒の悉皆調査を行った結果、約半数に庭園があることが判明した。この調査プロジェクトの集大成となっているのが本書だ。

掲載された庭園は約100軒。地元をよく知る庭師、中川源蔵さんと共に、NPOまちづくり役場のメンバーや地元誌の編集者、市民の有志、大学教員、学生など多くの人たちにより取材され、この地域に隠された豊かさを改めて知ることができる。

後の豊臣秀吉が、初めて一国一城の主となった長浜は、楽市楽座が行われることで自由取引市場が活発化。商業が盛んに行われ栄えた歴史深い町だ。小堀遠州は現在の長浜市小堀町に生まれた人物であり、江戸期以降にも辻宗範、勝元宗益(鈍穴)、布施宇吉(植宇)など、この地の庭園文化を支える造園家の名が残る。

今回の出版は、長浜、湖北の庭園文化の魅力を知る全国の人々からクラウド・ファンディングを通して支援があり、実現したとのこと。造園研究の第一人者達による対談、またこれらの庭を後世に残していくための活動など、現代的な課題についても共有がある。全国の“庭園文化”を愛する人々が、長浜の地をハブとして手を取り合う、そのきっかけになる一冊となっている。
【庭NIWA 249号掲載】

ながはまのお庭 総集編 
ながはまのお庭プロジェクト=編
発行/サンライズ出版
定価/2,200円(税込)

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