金閣寺を始めとした数多くの文化財庭園保護事業に携わり、また足立美術館庭園を始め、米国ボストン美術館天心園など国内外における数多くの庭園を作庭した中根金作(1917 ~ 1995)。
本書には、中根本人が1990年に静岡新聞へ執筆寄稿した自伝連載「わが青春」を軸に、携わった文化財保護や作庭、著書や論文に至るまでの詳細な仕事に関する年表や、中根が後年、長期間にわたり携わ った旧新居町の緑地公園整備の仕事に関する紹介、関係者による鼎談などがまとめられている。
「わが青春」では、中根が浜松工業学校に学んだ後、図面を引く仕事をしながらも造園への学びを志し、龍居松之助校長時代の旧制東京高等造園学校(現・東京農業大学)に学んだ経緯なども詳しく書かれている。またその学びが、度々の戦争への召集で中断されたこと、そしてその戦争体験が中根の理念と判断、そして嗜好すらも変えたことが生々しく描かれている。
自伝連載「わが青春」を探し出し、膨大な仕事を整理して本書を出版にこぎつけたのは市民団体である「湖西市新居・中根庭園を研究する会」だ。
旧新居町での緑地整備では、東海道の要所であったその土地の歴史を踏まえ、浜名湖と海を持つ地域の魅力を意識した基本設計となっている。
施工完了後も継続的に市民が手入れを良くし、今では庭園ガイドツアーなども催されている。作庭を通して地域に深く根ざす場づくりを行った中根の仕事は、今も人々の生活に脈々と受け継がれ、息づいていることを感じさせる。
【庭NIWA 242号掲載】
湖西市新居・中根庭園を研究する会=著
発行/静岡新聞社
定価/1,600円(税込)