造園業を営む両親の「世界を緑にしたい」という夢と「、庭を取り巻く環境を調和させる」という恩師から受けた教えを羅針盤に、住まいと庭が引き立てあうバランスを追い求めてきた造園家が、その設計アプローチや実践技術を惜しみなく公開しているのが本書だ。
具体例として取り上げられた24の「緑のデザイン」を見れば、多種多様な施主の好みに著者が真正面から取り組んだ様が感じられる。ラグジュアリーな大規模邸宅の庭をはじめ、地元の植生を受け継いだ緑に埋もれた家、露地道や坪庭、客人をもてなすためにつくられた多国籍感れる庭、光降り注ぐインナーガーデン、ファサードに1本だけケヤキを選んだ例まで、それぞれの環境を生かす方法が決して一様でないことを体現している。
本書には全体像やディティールの写真と共に、建築との関係性が理解できるような詳細図面が大きく紙面を占めており、また写真中にも樹種のキャプシ ョンが挿入されているなど、これらのアイディアを誰もが実践できるよう心配りされている。
第2部「作庭の進め方」では、実際に著者が作庭する際の調査、構想、計画から素材選び、施工工程までを丁寧に追っている。これから庭主にならんと考える施主もスケジュール感が掴めるであろう構成になっている。
【庭NIWA 242号掲載】
園三=著
発行/学芸出版社
定価/3,200円(税込)