禅の考えを取り入れた日々の生活の工夫について多くの著作を持ち、平易な語り口で人気を博している禅僧・枡野俊明は「禅の庭」に取り組む庭園デザイナーでもある。
3冊目のオフィシャル作品集となる本作では、最新作品群である15の庭が紹介されている。その立地は東京、神奈川など日本に留まらず、シンガポール、インドネシア、中国、アメリカなど世界へと羽ばたいている。海外における日本庭園に対する興味と意欲、そして“今”が垣間見える作品集と言えるだろう。
本作品集は豊富な視点からの庭園の写真がふんだんに掲載されているのはもちろん、着彩された平面図が挿入されており、庭の全貌を掴みやすい構成となっている。更に、全ての庭について枡野みずからのデザイン意図についての解説がある。そこに見えるのは枡野と施主との対話、その生活習慣や家族関係、それぞれの気候風土に対する眼差しだ。これらを踏まえ、庭が施主とその家族、住まう人々にどう憩いと潤いをもたらすかについて、ひとつの禅語に集約させるプロセスが示されるので、読者は物語を読むかのように、キーワードを探しながら写真集を「読む」ことができる。
庭に多様な意味がちりばめられており、また一方で何を感じるかは見る人それぞれの感性に任されている「禅の庭」にふさわしい楽しみ方ができる一冊となっていると言えるだろう。
【庭NIWA 232号掲載】
枡野俊明=著
発行/毎日新聞出版
3,000円(税別)