待ちに待った書物の刊行である。建築史学者にして人気建築家である藤森照信と稀代の博学と慧眼を誇る建築家・磯崎新による「にわ」談義。「茶室」「モダニズム」に続く建築口伝シリーズ第三弾となる。
なぜモダニズム建築は庭に触れなかったのか。小川治兵衛以降の庭はどうなったのか。誰もが疑問に思いながらもこれまで議論されなかった近代の庭にまつわる謎についても、切り込んでいる。モダニズムの建築論においては、建築と都市は理論化されているが、中間領域である庭や外部との関係については触れられていない。コルビュジエも、海や太陽、空、緑といった自然を相手にすると抽象的になってしまうという指摘は刺激的だ。
現代の庭を論じる時に、土、石、水、緑といった素材が人間や社会にとってどういう意味を持つのかを考察しなければならないと、藤森は言う。そうした庭を構成する素材を建築に持ち込み、庭が建築を侵食していると、磯崎は藤森建築を分析。人々が求める自然素材を生々しく建築に取り入れるのが、これほど人気を集める理由なのだろう。
日本庭園の成り立ちから現代の庭までを語り尽くす、刺激と示唆に富んだ必読の書となっている。
【庭NIWA 230号掲載】
磯崎新、藤森照信=著
発行/六耀社
3,400円(税別)