“縁”をつくる場所としての庭『en[縁]:アート・オブ・ネクサス』

本書は2016年に行われた「第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」の日本館の公式ガイドブックとして出版されたもの。日本館は「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」をテーマに1975年以降生まれの12組の建築家の活動に光を当て、特別表彰を受賞した。2017年9月28日から12月10日まで、TOTOギャラリー・間にて、凱旋帰国展が開催されている。

提示されているのは、高度経済成長が終わり、東日本大震災後の建築を模索する若手建築家の試みだ。「人の縁」「モノの縁」「地域の縁」という3つのキーワードは、住人や近隣、既存建物、地域との結び付きに注目し、建築が介在することで、さらなるつながりを引き出そうとする場所づくりを浮かび上がらせる。

ここでは、建物を外へと開く接点として、食堂、庭、広場、パティオなどが設けられている。例えば、常山未央の設計による「不動前ハウス」では、シェアハウスの前庭が、地域と共用リビングを結ぶ中間領域となり、お茶を飲んだり、BBQを楽しんだり、作業場の延長になったりする。つまり、庭が集合住宅の前庭、戸建て住宅の室内庭、ゲストハウスのパティオなど多様に展開し、外と内の緩やかな中間領域として注目され、活用されている。

けれども、登場する多彩な庭に庭師は関係していないように見える。そこにある緑は鉢植えや菜園、自然そのままの風景などだ。土地を読み解き、環境と人の縁をつくることこそが、庭師の仕事であり、こうしたプロジェクトに活躍の場がもっとあってほしいと思った。
【庭NIWA 229号掲載】

en[縁]:アート・オブ・ネクサス 
山名善之+菱川勢一+内野正樹+篠原雅武=著
発行/TOTO出版
1,500円(税別)

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