本誌でも何度か取り上げているが、自然が人間の脳に及ぼす影響を科学的に解明しようとアメリカの気鋭のジャーナリストが執筆したのが、本書。冒頭には日本の森林セラピーとその第一人者である千葉大学の宮崎良文教授の研究が取り上げられている。日本以外にも、アメリカ、韓国、フィンランド、スコットランド、スウェーデン、シンガポールと、世界の最先端の研究を取材し、自ら体験した成果がまとめられている。
それによると、自然の中で15分過ごせば血圧とストレスが低下し、45分過ごせば、認知機能や活力、熟考する力が増し、3日間過ごせば創造性が50%向上するという驚きの実験結果も発表されている。
アメリカ・シカゴの低所得者向け団地では、窓から豊かな緑の中庭が見える部屋の住人は、植栽がほとんどない庭に面した部屋の住人より、犯罪件数が少ないという調査結果が出た。心地良い中庭があることで、住人が利用し、顔見知りになるという側面もあるようだ。自然が健康やストレスの軽減に役立つだけでなく、幸福度や創造性にまで関わってくるとなれば、緑を身近に置かない手はない。
【庭NIWA 229号掲載】
フローレンス・ウィリアムズ=著 栗木さつき・森嶋マリ=訳
発行/NHK出版
1,900円(税別)