庭2021年冬号No.245
連載-未来を植える人びと-第17回
取材・文=梶原博子


未知の植物への探究心を持ち
古木オリーブを日本に伝えた先駆者

10年以上前にイタリアで出会った古木オリーブの魅力に取り憑かれ、日本での輸入販売を始めた髙敬植木園の髙津進一さん。地道にその魅力を伝えながら、古木オリーブの認知を広めていった。古木オリーブとの出会いと未知なる植物への探究心に迫った。

愛知県の西三河地方に位置する西尾市。平成23年に一色町、吉良町、幡豆町と合併して新たな西尾市となる。この地で親子3代にわたり、植木生産業を営む髙敬植木園が今回の訪問先である。太陽が照りつける真夏日に、JR蒲郡駅に降り立つと「暑い中、ようこそ」と出迎えてくれたのが、髙敬植木園の3代目・髙津進一さんだ。車で農園に向かう途中、小高い山が見えると、「この辺りは元・吉良町で、あの山に忠臣蔵で有名な吉良家の城跡があったんですよ。小説では悪役で描かれている吉良上野介公ですが、治水事業や新田開発などの功績を残していて、この辺りでは英雄として語り継がれているんです」と髙津さんは教えてくれた。
 髙敬植木園の農園がある西尾市は、その吉良家が治水工事を手がけたという矢作川と矢作古川に囲まれた中州に位置する。そのため土壌は砂地で水はけが良い。三河湾から1.6kmという立地で、比較的雨が少なく、温暖で乾燥した気候である。「愛知県の植木産地として有名な稲沢の土壌は粘土質で、西尾は砂地だから、同じ愛知県産の植木でも、稲沢と西尾では違った形や大きさに育つんですよ」と髙津さん。
 車を走らせていると、至る所に茶畑が広がっている。これは抹茶用の茶畑で「、西尾の抹茶」としてトップクラスの生産量を誇るという。他にもうなぎやあさりの生産も盛んで、カーネーションやバラ、洋ラン、観葉植物の花き類の生産地としても知られる。髙津さんによれば、・・・記事の続きは、庭No.245の紙版・電子版で。

樹齢700年程経つ古木オリーブ。ゴツゴツとひび割れた幹肌と室と呼ばれる穴がたくさん空いているのが大きな特徴だ。髙敬植木園には、シンボルツリーを探しに、店舗オーナーや個人邸の作庭を任された造園家がやってくる。
最近、輸入を始めたタスマニア産のディクソニア。
オリーブの原産国であるスペインでは、室に野うさぎが巣をつくるといい、そうしたエピソードが顧客に好評で、室のある古木オリーブから売れていくという。
古木オリーブの圃場では、ユッカロストラータやドラセナを栽培。
近年人気が高まっている日本産のソテツ。日本各地の工場や学校に植えられて年月が経ち、建て替えなどで処分が決まったものを譲り受けてもらい、海外へ輸出している。
子株をつくるためのアガベフェロックス。
髙津進一(たかつ・しんいち)

髙津進一
たかつ・しんいち| 1979年愛知県生まれ。1998年短大卒業後、2年間造園会社で修業。 2004年に家業である髙敬植木園入社。2008年頃から古木オリーブの輸入販売を開始。年間30〜50本の古木オリーブを販売する。西尾市に点在する3haの畑で約100品種の植木の生産と卸売販売を行う。
髙敬植木園(愛知県西尾市)

       【地図から探す植木生産者】

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