四季折々に漂う植物の香りは驚くほど多く、繊細で、香りを発する部位や匂いの性質もさまざまだ。本書1,000を超える植物の香りを具体的に取り上げ、それぞれの香りをガーデニングや街づくりにどう生かせばよいかを解説している。
イギリスのガーデンライターである著者は、本書で紹介している香り植物の多くを1エーカーにも及ぶ自身の庭で栽培しているという実践家。庭において、「香り」という要素は目に見えないが、その場所を強く印象づける大きな役割を果たす。けれども、多くのガーデナーに香りは軽視され、あまり理解されていないという。
本書は、香りをもっと効果的かつ積極的に庭園設計に取り入れるため、具体的な植栽計画や香り植物の種類、香りのミックスの仕方や漂わせ方まで、細やかに紹介。「ハチミツやアーモンドのような香り」「涎が出るくらい美味しそうなパンプキンパイの香り」など香りを描写する言葉が豊かだ。読んでいるだけで、かぐわしくおいしそうな香りが立ち上ってくる庭を散策している気分が味わえる。
【庭NIWA 226号掲載】
スティーブン・レイシー=著 アンドリュー・ローソン=写真
発行/柊風舎
15,000円(税別)