トータルマンとしてのランドスケープアーキテクトたちの素顔『進士五十八と22人のランドスケープアーキテクト』

今号では昭和の作庭家を紹介したが、現代のランドスケープアーキテクト22人に焦点を当てたのが本書だ。単なる作品紹介にとどまらず、彼らと親交のある著者ならではの温かな語り口による人物紹介になっている。

「すべてのデザインは人間に拠り人物次第」「『造園・ランドスケープ』を学ぶ本道は、そのことをする人間自身の思想やすごさ、その作品や空間を創る人間自身(人物)を追求し、その人物に学ぶことである」との言葉通り、実に多彩で人間的魅力にあふれたランドスケープデザイナーがいることを実感する。

もう一つ、本書のユニークな点は、森ビルの森稔氏やアートディレクターの北川フラム氏を取り上げていること。考えてみれば、垂直庭園都市である六本木ヒルズや、現代アートと里山が融合する越後妻有の風景を形づくってきた彼らは紛れもないランドスケープデザイナーだ。そうした幅広い視野と懐の深さから、ランドスケープ/造園は、「多様な人間生活に応える多様な計画デザイン術」であると捉え、そのためゼネラリスト=百姓(トータルマン)としての生き方を提唱する。それは、著者進士五十八氏自身の姿を物語っているようだ。
【庭NIWA 225号掲載】

進士五十八と22人のランドスケープアーキテクト 
進士五十八=著
発行/マルモ出版
定価/3,300円(税込)

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