庭2020年夏号No.239
連載-未来を植える人びと-第11回
取材・文=梶原博子


苗木からシンボルツリーまで 
地の利を生かした生産力と流通力

栃木県那須塩原市で父の代から受け継いだ植木の生産と卸売販売業を営む印南壮啓さん。時代の流れやトレンド、そして長期的な視点で植木生産に挑戦する姿に迫った。

「那須塩原にがんばっている生産者がいますよ。僕の大学時代の同級生で素晴らしい農園なのでぜひ見に行ってください」
 前号で訪ねた甚平植木の今里健吾さんから紹介され、栃木県那須塩原市で植木の生産と卸売販売を行う那須緑泉を訪ねた。現在、同社を切り盛りするのは35歳の若き社長、印南壮啓さんだ。
 東北新幹線の那須塩原駅から車で5分ほど走らせた接骨木地区に同社はある。
 「植木の生産を始めたのは親父です。祖父の代までは水田と酪農の複合経営だったそうですが、昭和50年にうちの田んぼの敷地に高速道路が建設されたことを機に、祖父が父に『これからは高速道路を活用した経営を考えろ』と言い、そこからブナとナツツバキの苗木生産を開始したんです」と壮啓さんは語る。
 同社は東北自動車道・西那須野塩原インターチェンジに近く、運搬の利便性から苗木は全国で飛ぶように売れた。その後、山採りのヤマボウシやシャラなどの雑木類も扱うようになる。そんな父の背中を見て育った壮啓さんは中学生のころから家業を手伝うようになったといい、自然な流れで東京農業大学地域環境科学部造園科学科へと進学先を決めた。
 「そこで甚平植木の今里君を始め、全国各地で自分のように家業が植木生産という同級生に出会えたのは大きな財産です。卒業した今は植木の取引もしていますし、交流が続いています」
 大学を卒業した後、神奈川県の造園材料会社で2年間修行を積んだ後に、実家に戻って父と共に家業を切り盛りしてきた。そして2年前に・・・記事の続きは、庭No.239の紙版・電子版で。

樹齢250年、樹高11年のコウヤマキの出荷当時の様子。今夏オープンする首都圏の大型商業施設のシンボルツリーとして植えられた。
秋の圃場の風景。落葉樹が多いため、秋は紅葉で圃場一面が鮮やかな色彩に埋もれる。
5月に花の見頃を迎えるキリシマツツジも那須緑泉が力を入れている植物のひとつ。赤と紫の鮮やかな花をつける。
種を植えてから1年で10cm程度に育ったアオダモの苗木。
那須緑泉の広大な圃場。これはほんの一部で、他に15カ所の圃場と畑がある。手前に茶色く紅葉しているのは キリシマツツジ。
シダレザクラの圃場。奥に見えるのが畑を横断する東北自動車道。
おかげさまでNo.239の紙版は完売となりました

印南壮啓(いんなみ・たけひろ)

印南壮啓
いんなみ・たけひろ| 1985年栃木県那須塩原市生まれ。2007年東京農業大学地域環境科学部造園科学科卒業。2年間神奈川の造園会社で修業し、2009年に家業に入る。2018年代表取締役就任。15haの農園で約50種類の樹木を扱う。全国各地への出荷も可能。造園家との直接の取引もできるため、気軽に問い合わせてほしい。
那須緑泉(栃木県那須塩原市)

       【地図から探す植木生産者】

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