2011年にユネスコの世界文化遺産に登録されてより、世界中から注目を集めるようになった平泉文化圏。ここには奥州藤原氏歴代の居館であった柳之御所遺跡や中尊寺金色堂を始めとした建築遺構群はもちろんのこと、特別名勝として名高い毛越寺庭園ほか、庭園の遺構群も多い。長年に渡る遺跡発掘と修復事業により、これらの遺跡は往年の姿をあらわにしてきた。
本書第二章「平泉の寺院庭園」では、中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡の4つの遺構について特に取り上げている。これら庭園の歴史的概要はもちろんのこと、発掘調査のきっかけ、経緯、それによって明らかになった遺構、実施された整備概要、発掘後の一般展示方法についての技術的課題やチャレンジまで、写真や復元CG、図面などをふんだんに用いて報告されている。
小誌でも、237号から始まった新連載「永遠の名庭園」第1回にて毛越寺庭園を取り上げた。極楽浄土もかくやと思わせる空間の広がりを誌面にて改めて感じていただきつつ、本書に収められた詳細な発掘研究成果をかみしめる程に、今後何度でも足を運びたくなることは間違いないだろう。
本書は「平泉の文化史」シリーズ全3巻のうち、1冊目として出版された。続いて『平泉の仏教史』『中尊寺の仏教美術』が今年中に発売予定。平泉の庭園文化をより深く理解するための助けになってくれそうだ。
【庭NIWA 239号掲載】
菅野成寛=監修 及川司=編
発行/吉川弘文館
4,800円(税別)