庭2019年冬号No.237
連載-未来を植える人びと-第9回
取材・文=梶原博子


関東ローム層に覆われた肥沃な黒ボク土壌が広がる茨城県かすみがうら市。シラカシやケヤキなどの高木を中心に東京の大型施設やマンションの多くに樹木を納入している植木生産者の千代田を訪ねた。

全国で2番目に大きい湖、霞ヶ浦があることで知られる茨城県かすみがうら市。霞ヶ浦の北岸の大地は関東平野に広がる黒ボクの土壌で覆われ、昔から果樹栽培や苗木生産が盛んに行われてきた。
 最寄駅のJR石岡駅に降り立つと、本日訪れる植木農園、千代田の代表取締役・宮本文雄さんが「ようこそ、茨城へ」といって笑顔で迎えてくれた。駅から車を走らせること15分、窓の外に目を向けると道路左右に梨畑と栗林が広がっている。
 「ナシとクリの苗木生産は、ここ千代田地区が全国1、2位なんですよ。我が社の社名の千代田は、地名からとったんです」と宮本さんが教えてくれた。

生産から造園工事まで一貫した体制づくり

 「私の父は役場勤めの公務員でしたが、代々受け継がれてきた農地があったので、母が果樹苗木づくりをしていたんですね。その光景を見ていたので私は農家を継ぐつもりで農業関係の大学に進学し、卒業後に埼玉県川口市安行の苗木業者で3年間見習いをしたんです。そこが果樹苗木と植木苗木の両方をやっていたので、仕事をしながら自然と植木の接ぎ木や扱いを覚えたんです。25歳で家に戻り、1978年に今の前身となる「千代田農場」を興しました。設立当初は果樹苗木を中心に生産をしていたのですが、バブルの頃に・・・記事の続きは、庭No.237の紙版・電子版で。

千代田で1位2位を争う出荷量を誇るのがシラカシ。常緑でまっすぐな立ち姿が美しいと人気がある。中でも株立ちは1本だけでもボリュームが出るため引き合いも多い。
シデの畑。枝葉が伸びたものは圃場で剪定し、時間をかけて美しい形をつくっていく。
雑木の圃場。アオダモやアオハダ、ヤマモミジ、アズキナシなどの雑木は福島県や栃木県から樹形の美しい山採りの木を仕入れて仮植して注文に応える。
最近、東京で引き合いが多いというサルスベリ。8月下旬にちょうど満開の時期を迎えていた。
クリと梨畑に囲まれるように植木の農場が広がる。
植木の出荷場。
ケヤキを苗木から育てている畑。
出荷場には水を溜めたプールをつくり、出荷前の樹木は根巻きを水につけて、根が乾かないようにしてある。
宮本文雄(みやもと・ふみお)

宮本文雄
みやもと・ふみお|千代田代表取締役。1953年茨城県生まれ。農業関係の大学を卒業後、埼玉県の苗木生産会社に3年間勤務。 1975年に家業に従事、1978年に千代田農場設立。1995年に株式会社千代田に商号変更。樹木の生産部、造園工事部を統括。趣味はサイクリングと七味唐辛子づくり。自分の畑で採れたとうがらし、みかんの皮、山椒、胡麻を使った七味唐辛子は現調に訪れた設計者や造園家、デザイナーにお土産として配り、好評を博している。
株式会社千代田(茨城県かすみがうら市)

       【地図から探す植木生産者】

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事