数寄屋建築の名匠 二代目が遺したものさし『中村義明の仕事』

 「材木の鬼」と称された数寄屋建築の名匠・中村外二氏。その仕事を継いだ二代目・中村義明氏は、2022年、コロナ禍のさなかにこの世を去った。豪胆にして繊細と語り継がれる人柄、茶室から料亭、家具、照明にまで及ぶ仕事。京都迎賓館主賓室や、ネルソン・ロックフェラー邸など、日本文化が世界へと開かれる空間を数多く残した。本書では、義明氏のその仕事ぶりと哲学がつづられている。

 義明氏をよく知る人々によって企画された本書。建築史家・三宅理一氏は、社会的文脈から「中村外二工務店」の系譜をひも解き、建築家・横内敏人氏や岸 和郎氏は「庭屋一如」の精神を貫いた現場でのやり取りから、その仕事の神髄を照らす。手触り、足触り、肌の触れる場所に注がれた中村親子の信条。日々の言葉と振る舞いの中に機微を見いだすのは、三代目・中村公治氏だ。素材に手を当て、その質を確かめ続けた目と技が随所に息づく。無類の食通として料理に注いだ情熱もまた茶室空間に通じ、数寄屋大工の枠を越えようとした生き様を浮かび上がらせる。伝統と現代を見据えた「数寄屋と家具」という新たな経営のかたち。親方であると同時に、和の本質を未来へ開くプロデューサーであったことが明らかになる。「義明語録」も収められ、過去の随筆やインタビューから義明氏の哲学と人柄をしのぶことができる。

 和の本質とは何か─日本文化の気配の核心をとらえ、愛情とユーモアのある生の言葉から今の私たちは何を受け取り、学べるのか。師と出会うような思いで開きたくなる一冊である。

【庭NIWA 262号掲載】

中村義明の仕事
中村義明、岸 和郎、三宅理一、横内敏人、中村公治=著
発行/TOTO出版
定価/4,400円(税込)

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Xでフォローしよう

おすすめの記事